「江戸城再建」天守から東京湾を眺めたい

スペシャル企画「東京はすごいぞ」

今村 翔吾 作家
岩壁 義光 中京大学社会科学研究所特任研究員
三浦 正幸 広島大学名誉教授
ライフ 政治 皇室 歴史

世界最高峰木造建築を構想する

 岩壁 私はいわば、江戸城が職場でした。24年間勤めた宮内庁書陵部が江戸城の本丸地域の、天守跡のすぐ麓にあるからです。いまから36年前、学芸員として十数年勤めた神奈川の県立博物館から、『昭和天皇実録』編纂のため書陵部へ移籍しました。竹橋駅で電車を降りて竹橋を渡り、北桔橋(きたはねばし)を渡って書陵部へ行くのが毎日の通勤路でした。

 今村 登城されていたんですね。

 岩壁 ええ。男の人の多くがそうであるように私もお城が好きでしたが、皇居で働くようになってからは「お城の中に生きるって、どういうことだろう」と考えるようになりました。ある冬の日には、書陵部の4階から降りしきる雪を眺めていました。お濠に落ちていく雪の、なんときれいなこと。四季折々、尽きない魅力があり、もっとたくさんの人がこの風景を見られたらいいのにと、よく思っていました。

岩壁氏 Ⓒ文藝春秋

 三浦 私も昔から城が好きでした。工学部建築学科の出身で専門は古建築なので、城をはじめ神社や寺院、民家などの建築を研究しています。なんといっても江戸城は“城の長”です。他の城と比べると呆れ果てるほど大きい。天守だけでも世界最大級の木造建築です。一度でいいから、そのとんでもない大きさを仰ぎ見てみたい。憧憬の思いを抱いていたところ、2004年に発足した「江戸城天守を再建する会」から乞われ、特別顧問を務めて20年。会長は、江戸城を築いた太田道灌の一八代目子孫・太田資暁さんです。

 今村 僕もやっぱり江戸城を見てみたいですね。江戸を舞台とした時代小説はこれまで数多く書かれてきましたが、そのほとんどに江戸城天守は登場しません。なぜか。江戸の時代小説は町人文化が成熟する元禄時代以降を舞台にすることが多く、1657年の明暦の大火で焼失した江戸城天守はすでに存在しなかったからです。出てこないからこそ、憧れが強い。

「江戸城」の再建は、東京の都市計画や再開発が構想される度に議題となるテーマだ。2023年には、菅義偉前首相(当時)が国民的な議論を呼びかけ話題になった。世界の主要都市と並ぶ歴史的建造物が東京に出現する日は来るのだろうか。歴史学者の岩壁義光氏、古建築研究者の三浦正幸氏、歴史小説家の今村翔吾氏の、江戸城をよく知る3人が、“江戸東京最大のロマン”について語り合った。

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source : 文藝春秋 2025年6月号

genre : ライフ 政治 皇室 歴史