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任官辞退者の会社の役員になった自衛隊OBも

 防大は難易度的にも容易に入れる学校ではないし、そこで4年間過ごして卒業できる学力・体力があるならば、自衛隊以外でも活躍できる目は大きいだろう。

 任官辞退者が民間で活躍した実例を挙げると、最近の改元の際に頻繁に流された平成を振り返る番組の中で、平成初期の象徴として登場することの多かったジュリアナ東京の仕掛人だった折口雅博がいる。

 独立した折口が率いたグッドウィル・グループは2000年代に急成長企業として知られたが、数々の不正行為が発覚して廃業することになる。しかし、グッドウィルには陸自OBの元防大教授が役員に就くなど、折口と防大の関係は卒業後も切れていなかったようだ。防大・自衛隊に仲間意識を持つ民間人が増えれば、自衛官の再雇用問題に悩む自衛隊にとっても悪いことではないだろう。

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陸上自衛隊朝霞訓練場で実施された「平成30年度自衛隊記念日観閲式」に参加した防衛大学校学生隊(防衛大学校ホームページ「防大タイムズNo.206」より)

重要なことは任官辞退者を減らすことではない

 結論を言えば、任官辞退者は他の辞退者と比べれば自衛隊への影響が小さいのに、割に合わない批判を世間から受けていると言っていいだろう。任官辞退者を締め付ける動きがますます強まれば、任官辞退者こそ減るものの、目に付きにくいがより深刻な入校辞退者や配属直後に辞職する幹部自衛官が増加することは目に見えている。

 防大生は在学中にも多くが辞めていく。これは致し方ないことだ。先に述べた事情もあるだろうし、そもそも高校で進路を選んだ時点で、自分の能力や適性を自覚し、自分にあった進路を選択できる人は少数だ。高卒で就職しても就職後に転職をする人は少なくないだろうし、一般大卒者は卒業の少し前に進路を決める余裕がある。防大に進路を決めた時点で、その後の人生がほぼ決まってしまうのは酷だろう。

防大卒業生は、陸海空いずれかの自衛隊の曹長に任命される。宣誓式では安倍晋三総理大臣と握手を交わした(防衛大学校ホームページ「防大タイムズNo.210」より)

 重要なのは、単に防大の任官辞退者を減らすことではなく、次代の自衛隊の中核となる優秀な人材を確保することだ。自衛隊へのミスマッチや違和感を抱えた防大生を、無理に自衛隊で勤務させることは単なる数合わせ以上の意味はないし、むしろ自衛隊に有害となる恐れがある。だったら、後腐れなく別の道に進んでもらった方が、自衛隊にも、なにより本人の未来のために望ましいだろう。