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川崎中1男子生徒殺害事件はなぜ起きたのか――石井光太が考える「貧困問題」の本当の問題点

凶悪事件から読み解く貧困問題 石井光太インタビュー#1

2019/09/28
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 日本の7人に1人が貧困層の今、貧困問題は決して個別の事象でもなければ自己責任でもなく、少年犯罪、虐待、売春、精神疾患、薬物依存と密接につながっている。新著『本当の貧困の話をしよう 未来を変える方程式』を上梓したノンフィクション作家の石井光太氏が、「忠生中学生徒刺傷事件」から「足立区ウサギ用ケージ監禁虐待死事件」まで、数々の凶悪事件から貧困問題の本質を浮き彫りにする。(全2回の1回目/#2へ続く)

©杉山秀樹/文藝春秋

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等価可処分所得が1人世帯で122万円以下の層

――日本は7人に1人が貧困層に該当し、実際の生活はかなり苦しい家庭が相当数あるにも関わらず、社会のなかで可視化されにくい気がします。

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石井 いま日本で問題になっているのは、「相対的貧困」の人々、具体的には等価可処分所得が1人世帯で122万円未満の層です。途上国のストリートチルドレンのような、見た目がもうボロボロの服で今日明日の食事にも事欠くような絶対的貧困ではないので、一見わかりにくい。でも実際には、日々ろくな食事を食べさせてもらっていない子供や、自分の親の年金で生活費をまかなっている50、60代、貧困ビジネスで食い物にされる生活保護受給者といった貧困層が2000万人近くいるわけです。