今年で50期を迎えた将棋の新人王戦。節目の年に優勝を果たしたのは高野智史四段(26)。3度目の優勝を目指した増田康宏六段との決勝三番勝負を2-1で制し、初の新人王となった。

 新人王戦は26歳以下かつ六段以下の若手棋士が参加する(女流棋士、奨励会三段、アマチュア棋士にも出場枠がある)棋戦で、「一流棋士への登竜門」とも言われる。

フルセットにもつれこんだ勝負は、黒星スタートからの2連勝で巻き返した高野智史四段(写真右)に軍配が上がった ©相崎修司

師弟での新人王制覇は史上7組目

 優勝した高野は以下のように語った。

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「私と同学年の棋士には、斎藤慎太郎七段や高見泰地七段のタイトル経験者がいます。また八代弥七段と三枚堂達也七段にも棋戦優勝の実績があります。彼らと比べて棋士デビューが遅れたので『追いつきたい』という意識はありましたが、先日の加古川青流戦で池永天志四段が優勝し、同い年の後輩が優勝を果たしたということには刺激を受けました。準決勝まで進んだあたりで、『今期こそは優勝』と強く意識したように思います」

 高野の師匠は、つい先日に初タイトルを獲得したばかりの木村一基王位だ。木村も第33期新人王戦で優勝経験がある。師弟での新人王制覇は史上7組目(過去の例は若松政和―井上慶太、森信雄―山崎隆之・糸谷哲郎、中村修―阿部光瑠、井上慶太―菅井竜也、森下卓―増田康宏)の快挙だ。

高野四段の師匠は、「千駄ヶ谷の受け師」木村一基王位 ©相崎修司

「こちらの優勝を伝えられることがうれしいですね」

 師弟そろっての慶事については、思わず顔をほころばせた。

「第1局を負けた後に師匠から連絡を受けました。『(番勝負は)一つ勝てば違うから』と。当時は師匠がタイトルを取って間もなくだったこともあり、言葉の重みが違いますよね。実際に第2局で追いついて、タイになったというだけでなく、流れがこちらに来たという感じもありました。

 実は師匠がタイトルを取ってから、まだ直接はお会いしていないんですよ。もちろんお祝いの連絡は入れてますが、面と向かった時に何と言えばいいのかなと。ですから、こちらの優勝を伝えられることがうれしいですね。実際に会ったらですか? まず私が『おめでとうございます』と言いますが、対してどのような言葉が返ってくるか楽しみですね」

 若き英俊が、輝かしい歴史を持つ「新人王」にその名を連ねた瞬間だった。

カド番の第2局で踏ん張れたことが勝敗の分水嶺となった ©相崎修司