いじめに関する部分を削除しなければ不掲載
2020年1月6日。仕事始めの日に、学校から返事があり、「すばらしい内容」と書いてあった。しかし、細かい書き振りについて、相談をしたいとも言われた。そのため、母親は9日に学校へ行った。すると、いじめに関する部分を削除するよう言われた。調査委がいじめと認めなければ文集には載せられないこと、テーマに沿っていないことなどが理由だった。
残すことが認められた部分は、具体的な記述がない次のようなところだ。そうでなければ、不掲載になると告げられた。
〈私は、いじめにより、国連人権宣言や日本国憲法にある『教育を受ける権利』が侵害されている事を知りました。また、学校教育法でも、加害児童への懲戒処分や出席停止により被害児童の教育を受ける権利を保障しようとしていますが、実際には全く守られていない事も知りました。
大阪の寝屋川市では、子どもたちをいじめから守るための条例が去年の12月議会で可決され、いじめ加害者を出席停止や転校させる勧告を、市が教育委員会に出せるようになった事をお母さんが教えてくれました。
このような取り組みが、少しでも早く、札幌、そして全国にも広まって欲しいです〉
ツイッターやメディアに訴えかけると、対応が一転
一部削除には、Aさんも母親も納得がいかない。
「法務局に相談をしました。対応した職員は『(原文の掲載に)問題はない』と言いました。市教委にも相談しました。しかし、学校側は態度を変えませんでした。2月4日に『掲載しない』と伝えてきました」(母親)
そのため、母親は、作文の一部削除の件をTwiterにつぶやいた。同時期に、北海道新聞、朝日新聞、共同通信に連絡した。2月10日に市教委や学校に取材があったというが、そのことが影響してか、校長から連絡があり、一転して作文が掲載されることになった。
その後、校長からは、謝罪する内容の手紙が届いた。ただ、個人的な私信としての扱いのためか、校長という役職は書かれておらず、差し出し人の住所は、学校の住所ではなかった。
Aさんは、医師からも「不安・抑うつ状態」などと診断されるほど、いじめの後遺症がある。ほぼ1年間は、外出もできないでいた。家族で半日のドライブをしたときでも、留守番をしていたくらいだ。
ただ、取材日の数日前から外出できるようになったが、作文にもあったように、「それでも、同年代の子どもがいるところはダメ」と不安はまだ残っている。加害者に対しては、「二度と目の前に現れてほしくない。コンビニでたまたま見かけたときに、走って逃げたこともありますから」と語っている。
札幌市教育委員会は、電話取材に対して「個別の問題は答えられない」と話した。
児童からのSOSを封殺しようとした「事なかれ主義」の大人たちの責任は大きい。