私が知る中では、北野武さんの雰囲気にちょっと似ているかもしれません。武さんとは『ビートたけしのTVタックル』で共演したことがありまして、直接お話ししたこともあるんですが、武さんも素顔は人見知りで知られます。でも、ひょっとしたら武さんよりも志村さんの方が、言葉が少ない、寡黙な方かもしれないです。テレビで見ている印象とは全く違いましたね。
「笑ってるとさ、また頑張ろうって思えるじゃない」
特に記憶に残っているのは、志村さんに「お笑いとは何ですか?」とお聞きしたときのやりとりです。その質問に対して志村さんは、「お笑いって、よくわかんないけど元気とパワーをもらえるよね」と仰って。「笑ってるとさ、また頑張ろうって思えるじゃない」と。それは本当に良い言葉だなと思いましたね。
お話を伺っていると、志村さんは一つ一つのコントをとにかく作り込んでいるんだな、と感じました。こうすると面白いんじゃないか、いや、こっちの方がいいんじゃないかと、何度も試行錯誤しながら作っていく。でも、そうした努力は外に見せない方なんだと思います。
私もインタビューでは、「あのときはどうだったんですか?」「あの伝説のギャグはどうやって生まれたんですか?」と聞くわけです。でも、やっぱり自分がやっているお笑いを解説するというのは、どこか気恥ずかしいことだと思うんですよね。志村さんが自分の話をされるときに、終始照れ笑いのような、はにかんだ表情をされていたのも、そうした気持ちがあったからじゃないかな、と感じます。
“厳格な父親”のもとでお笑いを目指した日
ただ、それでも「自分は喜劇人なんだ」「コメディアンなんだ」という自負は、すごく伝わってきました。そもそもお笑いの道に進んだきっかけは、子供時代の経験にあるそうなんです。
志村さんのお父さんはもともと軍人で、戦争が終わってからは小学校の先生をやっていて、教頭にまでなった。そうした職業柄か、とにかく厳格な父親だったそうで。いわゆる、“日本のお父さん”が強い時代の家庭で、ときに堅苦しいような、窮屈なような、そうした家だったんだと仰っていました。