カフェ営業危機で保護猫の行き場が…
このような対応で、猫たちをウイルスから守ることはできるのか。日本ペット診療所院長で獣医師の山川晃平氏が解説する。
「猫カフェでは、とにかくお客さんによく消毒してもらうしかないでしょう。ウイルスはやはり手に付着するケースが多いので、手洗いと消毒を徹底する。お客さんの体や服に付着していたウイルスが、猫カフェの猫へ感染することはあり得ます。人から猫に感染した事例はまだ少ないですが、何より感染させないことが大事です」
一方、ウイルス感染のほかに、猫カフェにはもうひとつの切迫したリスクがある。冒頭のドイツの動物園と同様、経営難によって、たくさんの猫の命が危険に晒される可能性があるのだ。
前出の柳澤氏が話す。
「うちの店内には8匹の猫がおり、3分の1が里親を探している猫です。(行政による)殺処分を防ぐために、これまではお店の猫の里親が決まったら、新規の猫を動物愛護センターに引き取りに行っていたのです。ですが、現状ではお店を開けられないので新しい猫を迎え入れることはできません。休業していても猫の医療費、ご飯代はかかりますので、物資の支援をお願いしたりして支援者から寄付をいただいております。今の状況が長引くと、お店を閉めるということも考えないといけない厳しい状況です」
これまでは保護猫カフェや、ボランティアなどによる保護・譲渡活動が、猫の殺処分を減らすことに大きく寄与してきた。だが、コロナ休業で保護できる猫の数が減る可能性があるのだ。
コロナ後も同じ業態で続けられるのか
一般社団法人「CATS&DOGS動物福祉協会」代表で、「CATS&DOGS CAFE」を経営する吉田智恵子氏も、4月1日に店舗の営業休止を余儀なくされ、保護活動の資金繰りに困っていた。そんな中で、同協会はクラウドファンディング「Save the Cat」で活動資金を募ることを始めた。
「20匹の保護猫がいますが、休業中も家賃や光熱費に加えて、治療が必要な猫もいるため医療費がかかります。営業していたときは猫カフェの売り上げや募金で補ってきましたが、これらの収入が失われることになり困っていました。しかし、猫や犬を引き取ってくださった里親さんたちが4月14日にクラウドファンディングを立ち上げてくださったのです。個別に寄付をしてくれたりもして、なんとか持ちこたえています。立ち上げから1週間も経たないうちに、2カ月分の活動資金となる目標金額70万円を達成することができました。本当に感謝しております」
だが、店舗営業を再開できたとしても、これまでのような業態を続けられるとは考えていない。
「休業前のように『完全予約制』を続けて、さらに何かあったときのためにお客さんの連絡先をお聞きして、店内が“3密”にならないようにするなど、万全の対策を心掛けなければなりません」(同前)
いま世界中で新型コロナウイルスのワクチン開発が進んでいる。だが、開発には12カ月から18カ月かかるとも言われている。動物と人間がこれまで通り触れ合えるようになるには、もう少し時間がかかると覚悟すべきなのだろう。