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大司教区が“A神父の背信行為”を庇った理由
ちなみにGSI-ARMSの名刺にある「国際NGO登録ID」という称号も変だ。
国際協力NGOセンター(東京・新宿区)に問い合わせたが、「そのような仕組みは内部にはないし、外部でも聞いたことがない」。「セルフケア総合研究所」は内閣府のNPOデータベースに登録こそあるが、事業報告書によれば、「覚書」作成の17年の当時でさえ、すでに収入も支出もゼロで、実質的な活動実態はないことは明らかだった。
献金を預かる立場として見れば、そもそも回収が危うい相手に財産を委ねたA神父の13年の貸し出しが最初の背信行為だ。だが、それにも増して信じがたいのは、17年の覚書である。なぜなら「A神父個人の独断」を「大司教区が結んだ契約」として追認する最悪の選択で、信徒は再び裏切られたことになるからだ。
にもかかわらず、大司教区はなぜ、あえて追認するような覚書を締結したのか。可能性は2つだ。(1)A神父が貸し付けた当時のK氏は貸出先として健全だと判断できる事情があった、あるいは(2)事を荒立てずに隠蔽したかった――。この点を見極める手がかりになるのが、貸し出しの経緯を記した3つ目の資料だ。
後編では、資料から明らかになった事実を整理していこう。
(後編に続く)
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