ポストモダン文学の旗手として、小説や文芸評論などで多面的に活躍し、今や文壇の重鎮である著者。そんな著者が20年をかけて完成させた『論語』の全訳が、手に取りやすい新書にまとまり、好調な売れ行きだ。
「私が2014年に雑誌『文藝』の編集長になるにあたって、高橋さんが以前から話されていた『論語』の全訳企画の連載をご相談したのが、本書の発端です。私も『論語』を通して読むのは初めてでしたが、高橋さんの訳で読むと、2500年以上前の人が書いたとは思えないほど現代に響く内容で驚きました」(担当編集者の尾形龍太郎さん)
たとえば、かの有名な〈巧言令色には、鮮(すくな)いかな仁〉という短い一節も、高橋の手にかかれば〈くれぐれもいっておきますけど、猫なで声でしゃべる人とへらへら笑ってる人にだけは気をつけるように。そんな人には『仁』なんかありません。たいていバカですよ。というか、バカ以下です、ふつう〉と、軽妙で、現代に通じる文章に。なお、意訳はしているものの、参考文献には定評ある先行研究がずらり。翻訳への姿勢がうかがえる。
「『論語』といえば政治について書かれた本、またはビジネスパーソン向けの教養書のイメージが強いかと思います。しかし、広い意味での生き方指南本としても読める。本書が、読者の皆さんの日々の暮らしを照らすものになれば」(尾形さん)
2019年10月発売。初版2万5000部。現在10刷7万部