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「アルツハイマーになったら悪いのでしょうか」“認知症の私たち”が本を書く理由

2017/09/10

genre : ライフ, 医療, 社会

認知症を苦しめる「視線の病」

 NHKディレクターの川村雄次は、数多くのドキュメンタリー番組を撮るなかで認知症を取材する自分たちが「視線の病」に侵されていることに気づいたと語っている。視線とは、認知症の人を見る目線、すなわちスティグマ(偏見)。病気や症状そのものではなく、「視線の病」が、認知症の人を苦しめているというのだ。この理解からいくと、認知症は、患者の病ではなくて、もはや、“社会の病”ということになる。

左上から時計回りに丹野智文さん(43)、樋口直美さん(54)、福田人志さん(54)、町田克信さん(65)のメッセージ

 この社会に生きる私たちは、否応なく、この“病”を生み出す側になる可能性を持っている。たとえば、メディアで働く人間として言うならば、認知症を十把一絡げに扱い、介護の大変さや、一律に運転が危険だ、などと断定的に伝えること。また、“徘徊”や“暴力”という言葉を使い、認知症のイメージと結びつけるような報道も危険だ。

 そして、医師などの専門職。いま世の中にある偏った認知症の姿は、医療介護の専門職によってつくられてきた面もあることを認識しなくてはならない。「認知症=何もわからなくなる、認知症=人生の終わり」というイメージを打ち破る戦いが、当事者によって始まっている。

「アルツハイマーになったら悪いのでしょうか」“認知症の私たち”が本を書く理由

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