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2010年代「日本ならではのスパイスカレー」の誕生

 さらに2010年代以降、そこから派生するまた少し別の流れが生まれます。南インドカレーやスリランカカレーをベースにした日本ならではの「スパイスカレー」の誕生です。

 つまり先程少し触れた「狭義のスパイスカレー」がまさにこれ。言うなれば第二世代です。第一世代のムーブメントがあくまで東京中心の文化だったのに対し、この第二世代は最初に大阪が中心となり、その後全国に波及していくことになります。

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 第一世代のスパイスカレーがインドを中心とする様々な地域のカレーを「現地そのままに」再現する事に重点を置いた、言うなれば「原理主義」的なムーブメントだったのに対し、第二世代は「作り手の自由な発想」に重きが置かれました。

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 そしてそれは良くも悪くも、現地そのままでなくてはならない、というこだわりから解き放たれたものであったが故にマニア以外の一般的日本人にとっても極めてとっつきやすい物となり、スパイスカレーブームは更に加速し、そして今に至ります。

 第二世代の登場で「カレーの多様性」は更に増したという事が言えますが、一方で、原理主義的な第一世代にとってそれは、せっかく日本で成熟しつつあった本格的な各国スパイス料理文化が「勝手なアレンジ」によってローカライズされ矮小化しつつある、という危惧にもなっており、そこにはある種の対立軸も生まれているようにも感じます。

 ただそれはマニアの世界によくありがちな些細な内輪揉めであり、そこで起こる批判や論争は、結局このスパイスカレーのムーブメントを更に盛り上げる燃料として機能しているのではないかと個人的には解釈しています。

スパイスカレー作りになぜハマってしまうのか

 僕自身が(広義の)スパイスカレーを作り始めた時の事を思い出します。

 スパイスからカレーを作るなんて魔法みたいだ、と当時の僕は考えていました。変な匂いのする様々な粉や実や種や皮や葉っぱを組み合わせると、うまくやればおいしいカレーができる。それはまさに、魔女が大鍋をグラグラ煮立てて作る秘薬の世界。そんな神秘的な世界にすっかり魅了された訳です。

©️iStock.com

 しかし、いろんな地域のカレーのレシピを掘り起こし、それを片っ端から再現している内に、それらは一定の法則性や理論に基づいているという事が徐々にわかってきました。すなわち、魔法が科学に転換されていったわけです。そうなると今度はその科学的推論に基づき、ある程度自分が作りたいイメージのカレーを作ることもできるようになってきました。もう夢中になるしかありません。