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“布団を叩く音もセックスの音かと…” 「セックス依存症」と診断されるまでの”ヤバい日々”

漫画家・津島隆太さんインタビュー#1――依存症体験を発信し続ける

2020/11/12
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精神医療を気軽に受診できる世の中になってほしい

――セックス依存症の怖いところは、どういうところですか?

津島 まず、依存症は完治しません。それでいて、「死に至る病」とも呼ばれていて、自殺してしまう人が多いんです。

 これは、依存症から抜け出すために嗜癖をやめた生活を送ることで、生きがいをなくしたように感じる人が多いからです。その結果、鬱になり、問題行動を繰り返す中で希死念慮が高まり自死に及ぶ。セックス依存症だけでなく、アルコールやギャンブル依存症も同じです。

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©️杉山拓也/文藝春秋

――生きがいをなくすって、どんな生活になるんでしょう。

津島 日常生活で「楽しい」と感じることがなくなります。私は、愛犬の「ろむ」と散歩するのが気分転換になるぐらいで、何をしても楽しく感じません。

――ぞっとする生活ですね……。

津島 それでいて、刑務所の再犯防止プログラムを受けても、再犯率が高いのが実情です。そもそも、再犯を繰り返している人じゃないと依存症と認められないことが多いんですよね。

 私は最近、依存症になってから治療するのでは遅いと感じています。依存症は行動化できないことから「人生が終わってしまう」という気持ちになり、自暴自棄になりスリップ(再発)を繰り返します。加害行為を含む性依存症の場合、スリップしたら性犯罪や不倫の被害者が出る可能性が非常に高い。

 だからこそ、依存症になる前にケアをすること。依存症患者は、依存行為にのめり込む前から、うつ病やトラウマなどの心の問題を抱えていることが多い。だから、その心の問題を早めに解決することが一番の予防につながると思います。

――依存症にならないためには、どうすればいいんでしょう。

津島 第一には、依存らしき行為をやめる。例えば、お酒を飲んで道で眠ってしまったのなら、アルコール依存症かもと疑ってアルコールを一度断ってみる。もし、自分の意思で飲酒がやめられなければ、依存症の可能性があるので病院を受診した方がいいです。

――とはいえ、心療内科などの受診は、世間的にハードルが高いのが実情ですよね。

津島 そうなんです。精神疾患のために病院を受診する患者は、世間から異常者扱いされ、就職や仕事に支障が出たり、社会不適合者という烙印(スティグマ)を押されたりします。だから皆さん、受診をやめてしまう。

©️杉山拓也/文藝春秋

 もっと精神医療のハードルをさげて、気軽に受診できる世の中になったら、依存症に悩む人も減ると思います。

集英社「グランドジャンプめちゃ」で『セックス依存症になりました。<決定版>』を、「めちゃコミック」で『セックス依存症になりました。』を連載中。
12/18(金)に『セックス依存症になりました。<決定版>』のコミックスが発売予定。

“布団を叩く音もセックスの音かと…” 「セックス依存症」と診断されるまでの”ヤバい日々”

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