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作品をよく観ると見えてくる「日本的モチーフ」

――池田さんは波をよく描かれている気がしますが、海は近しい環境にあったんですか?

池田 生まれたのは佐賀の内陸ですし、父とよく行った釣りももっぱら川釣りでしたから、それほど身近ではないです。ただ、バンクーバーに住んでいた時は海辺の町だったので、生活の中に海があったし、震災があってからは波を意識せずにはいられなくなった。それから、2012年のことなんですが、オレゴンに行った時に見た、断崖絶壁からの波の表情が面白かったんです。魅せられた、というやつですね。岩に当たってできる波模様とか、泡の飛沫とか、海面に映る模様とか、ほの暗い水底の色とかが、きれいだったり、怖かったり。波というものをじっくり見たのは、それが初めてのことだったのですが、海や波というものに意識的に取り組むきっかけの一つにはなっていると思います。

「誕生」(部分) ©︎IKEDA Manabu, Courtesy Mizuma Art Gallery, Tokyo/Singapore

――池田さんの作品でよく見受けるモチーフとしては鳥の群れも指摘できる気がしています。『誕生』や『Gate』にはそうした構図が登場しているんですが、何となく日本っぽいというか、日本画っぽい感じがしました。これは意識的に描いているんですか?

池田 日本的なテイストとして意図的に入れています。バンクーバーから拠点を移して、いま3年ほどアメリカ住まいをしていますが、どうしても日本人アーティストとしての期待をされるところはあるんですよ。作品を観てくれる人も、日本的モチーフを探しながら愉しんでくれているというか。そうした思いに応じている感じかな。

「誕生」(部分) ©︎IKEDA Manabu, Courtesy Mizuma Art Gallery, Tokyo/Singapore

――作品に日本画の画材を使ったことはないんですか?

池田 ないですね。ただ、墨絵には関心があって、自分でも何か展開できないかなとは思ったりします。藝大で教わった日本画家の中島千波先生に、機会があったら考えを伺ってみたいと思ってます。

――次回作の構想は、もう頭の中にはあるんですか?

池田 そうですね、なんとなくはあるんですが、本格的にはアメリカに帰ってから考えようと思っています。一つだけ言えることは、『誕生』みたいな3メートル×4メートル級の大きさにはならないだろう、ということですね(笑)。

 

写真=佐藤亘/文藝春秋

いけだ・まなぶ/1973年、佐賀県多久市生まれ。2000年、東京藝術大学大学院美術研究科デザイン専攻修了。04年からミヅマアートギャラリー所属。13年よりアメリカ・ウィスコンシン州マディソンに滞在。作品に『再生』(01年)、『興亡史』(06年)、『予兆』(08年)、『Gate』(10年)、『誕生』(13-16年)など。

INFORMATION

池田学展 The Pen―凝縮の宇宙―
9月27日~10月9日
日本橋高島屋8Fホール
入場時間:10時半~19時まで(19時半閉場、ただし最終日は17時半まで入場、18時閉場)
入場料(税込):一般800円、大学・高校生600円、中学生以下無料

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