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 このように主要メンバーの離脱で人気が減退するAKB48に対し、人気が上がっていったのは乃木坂46や欅坂46などの坂道グループだ。そもそもAKB48のライバルとして誕生した坂道グループだったが、違いも多くあった。各グループのコンセプトが明確であり、メンバー同士が総選挙などで競い合うことはなく、そしてルックスが重視されてメンバーは選ばれた。同じなのは握手会を行い、CDの複数枚購入を促進するビジネスモデルだ。

 若いファンはAKB48から坂道グループに移っていった。乃木坂46の清楚さに惹かれるファンもいれば、欅坂46の思春期的なコンセプトに共感するファンもいた。AKB48グループが見せてきた競争よりも、よりシンプルなグループをファンは求めた。

乃木坂46 ©時事通信社

“雑な運営”が明らかになったNGT事件

 3つ目は、2019年1月に発覚したNGT48の不祥事だ。メンバーのひとりがファンに襲われた事件は、運営会社・AKS(現ヴァーナロッサム)の事後処理の不手際によって状況がひどく悪化した。

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 この一件は、AKB48グループの社会的信頼を失墜させた。明るくて楽しいエンタテインメントを提供してきた日本トップのアイドルグループが、きわめて雑に運営されていることが明らかになってしまったからだ。

 AKS社の記者会見中に被害を受けたメンバーがTwitterでリアルタイムに反論したり、第三者委員会による調査報告の会見が行われなかったりするなど、AKSの対応はきわめて杜撰だった。そうした姿勢がさらにメンバー同士の亀裂を大きくし、ファンたちの疑心暗鬼や離反を招いた。

プロデューサーの秋元康 ©文藝春秋

 春には、10年続いていた夏の総選挙の開催が見送られた。この不祥事だけでなく、前年までにテレビ視聴率は低落傾向にあり、スポンサードは簡単ではない状況だった。それに加え、ファンたちの投票が運営側の期待とは異なる結果(被害を受けたメンバーが上位に来る可能性など)を導く可能性もあったからだと推察される。この春(3月いっぱい)には、冠番組の終了も相次いだ。

「会いに行けるアイドル」の欠陥

 だが、この事件は「会いに行けるアイドル」という特有のコンセプトが生じさせてしまったことでもある。ファンがメンバーの住むマンションにまで押しかけたのは、直接コミュニケーションを取ることが生じさせた勘違いに端を発する。つまり、AKB48の基本的なコンセプトの欠陥が露わになってしまったのだ。

 もちろん、当初このコンセプトは大いなるアドバンテージだった。アイドルとの直接的なコミュニケーションが引き起こす一部のファンの熱狂が、大きな渦を描いて拡がっていく──00年代後半から10年代前半にかけて、それはSNSなどネットでのコミュニケーションによって増幅されていった。

2013年にリリースされた『恋するフォーチュンクッキー』(キングレコード)

 プロデューサーの秋元康は、AKB48グループを学校のようなものと見立てていた。運営側が強く指示を出すことなく、メンバーたちの自主性に任せる。放任的なその自由度こそが人気につながると読んでおり、実際に10年代前半まではそうだった。フジテレビの『テラスハウス』がヒットするまでは、AKB48は高校野球と並んで日本を代表するリアリティーショーだったからだ。