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連載文春図書館 著者は語る

「彼女たちに『やめたら』と伝えたこともあるんですが…」

「彼女たちに『やめたら』と伝えたこともあるんですが、素直には聞いてくれない(笑)。でも、例えば家庭内暴力を受けている子に、もう痛い目にあってほしくないという話はします。でも、決めるのはその人自身であり、先回りして暴力を防ぐことはできない。こちらが封じても数カ月後には同じことが起きるので。その子の経験を奪うことはしちゃいけない、信じようと思います」

 加えて本書では、沖縄に起こった様々な問題にも光を当てている。辺野古新基地を建設するため海に土砂が投入された日のことを書き起こした「アリエルの王国」や、自宅の水道水が汚染されていることを知った時の話を綴った「きれいな水」。沖縄の生活を描くエッセイからは、作者の絶望がひしひしと伝わってくる。

上間陽子さん

「前作を執筆してから、やっぱり様々な反応がありました。研究の世界と違い、本を書くということは、顔の見えない方々に文章を届けるという作業で、どういう方が読んでくれるのか、まったく見えない中で仕事をしていました。

 その中で意外なところに届いたなと感じたのは、良心的でまさに生活者でもある女性層に読んでもらい、反応をもらえたこと。昨日もちょうど届いたんですが、個人の方からお手紙と一緒に、調査に役立ててと商品券やお米券を頂くんです。沖縄のことが大好きで、私が書いたような状況に共感し、できることをやりたいと考えて行動してくださっているのだと感じます。

 もう十分に自助というレベルでは私たちは行っています。でも政治のレベルは全く動きがない。なぜこんなに公助が撤退しているんだろうと思い続けています」

 あとがきでタイトルの由来と、執筆のきっかけが明かされる。“海”を受け取った人がどう反応するのか、問いかけられている。

うえまようこ/1972年、沖縄県生まれ。琉球大学教育学研究科教授。1990年代から2014年にかけ東京で、以降沖縄で未成年の少女たちの支援・調査に携わる。現在は沖縄で若年出産をした女性の調査を続ける。近著に『地元を生きる:沖縄的共同性の社会学』(共著)

海をあげる (単行本)

上間 陽子

筑摩書房

2020年10月29日 発売

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