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「演奏のタイム感が本当にジャストなんですよ」山下達郎が初めて語ったドラマー・村上“ポンタ”秀一

「演奏のタイム感が本当にジャストなんですよ」山下達郎が初めて語ったドラマー・村上“ポンタ”秀一

山下達郎ロングインタビュー#2

2021/04/11
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「MONDAY BLUE」などバラードは圧倒的

――当初、エコノミーを考えて始まった企画だったはずなのに。

山下「演奏があそこまで長くなるとは、予測してなかったから。でもそんな中で、ポンタはヴォーカルをいかにサポートするかを、繊細に考えてくれているドラマーだった。ムダなことはしない。この本(『俺が叩いた。 ポンタ、70年代名盤を語る』リットーミュージック)読んで初めて知ったんだけど、『ポッピン・タイム』の時には、シンバルが鳴らないようにカスタマイズしていたそうなんです。松木さんに『お前、その“チン”要らないから』くらいのことは、言われたのかもしれないけど」

――それはご存知なかった。

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山下「知りませんよ、そんなこと」

――とはいえ、そういうエピソードって、いかにもポンタさんらしい。テクニカルな面で評価されることの多い方でしたけど、実は歌を非常に大事にされていた。「赤い鳥」時代の話が出ましたが、当時のライヴ映像を観ても、手数が多いようでいて、山本潤子さんのヴォーカルを侵害するような演奏は、絶対にされてませんよね。

山下「絶対しませんよ、あの人は。歌を本当によく聴いてるから。ジャズといっても、ヴォーカルが好きな人なんです。特にバラード。ポンタに任せておけば、段取りを全部組んでくれたから、安心していられた。『MONDAY BLUE』という曲があって(『GO AHEAD!』収録)、ベースは岡沢さんだけど、ああいう曲はとにかくポンタが一番だった。バラードの表現力が、とにかく圧倒的だから」

「(ポンタ氏の)バラードの表現力が、とにかく圧倒的だから」と山下氏が語った「MONDAY BLUE」を収録したアルバム「GO AHEAD!」

――そこ、意外と語られてない気がするんです。

山下「だからスタイルじゃないんですよ。なんて言ったらいいかな。やっぱり(音楽に向かう)スタンス。ポンタだって70年代には不当な批判を浴びてたんだから。やれ『キックが弱い』とかさ」

「PAPER DOLL」とか、今聴いてもしびれる

――そんなことを言われてたんですか。

山下「さんざっぱら言われてましたよ。けどそんなの別に……要は表現力の問題なんだから。ポンタにだって苦手な曲調というのはあって、跳ねるリズムはあまり得意じゃなかった。そういう曲を演奏する時には、前もって相当練習していたんじゃないかな。かと言って『キックが弱い』とか言ってるやつが、じゃああのタイム感を出せるかっていう。今日、この取材のために『ポッピン・タイム』を聴き返してきたんですけど、やっぱりタイム感が違うんです。『PAPER DOLL』とか、今聴いてもしびれる」

――武士の間合いみたいですもんね。

山下「でも、それが出せるのは、岡沢さんと松木さん、坂本くんが合致しているからこそ、なんです。一人だけうまくてもダメなの。ポンタのキックの上のところに、岡沢さんのポイントがちゃんと入っているから、キックとベースの『フンッ』という重なりが生まれる」

――おもしろいです。

山下「ミュージシャンってそういうことを深く感じるから。そこが『お前とはまたやりたい』か、『お前とは二度とやらねえ』の分かれ道。深いです」

#3へ続く)

 2021年4月11日の、山下達郎氏のレギュラーラジオ番組「サンデー・ソングブック」(TOKYO-FM系 全国38局ネット、毎週日曜日14:00~14:55)では、「極私的 村上“ポンタ”秀一 追悼」特集を放送するとのことです。ファン垂涎の音源が飛び出すかも!?

※4月18日(日)の「サンデー・ソングブック」でも、引き続き「極私的 村上"ポンタ"秀一 追悼 Part 2」が放送されることになりました。本記事とあわせて、ぜひお聴きください。

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。

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