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 紳士靴に関しては、「究極の一足」といううたい文句で、千葉刑務所がオーダーメードを受け付けている。「ハンドソーンウェルテッド」と呼ばれる、紳士靴の最高級の製法が用いられ、使用されている素材は、ヨーロッパの中でもトップブランドに入るフランス「デュプイ」やイタリア「イルチア」の革だ。製造期間は、規格品が3ヶ月で価格は約4万円、オーダーは半年で6万3000円と決して安くはないが、「注文が入りすぎて生産が追いつかないほど」(矯正協会担当者)の人気ぶりという。

 10年前に訪れた刑務所作業製品の即売会がきっかけで、「キャピックショップなかの」の常連になったと話すのは、中野区在住の主婦(68)だ。

「商品に対する抵抗感は特にありません。あったらそもそも来ないですし。受刑者の方は、何かがあってそういう身になっただけ。一歩間違えれば、人間誰しもその可能性はあるでしょ? 同じ人間ですもん」

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なかのショップの裏手にある旧中野刑務所正門。1983年に閉鎖された

売れ筋1位は洗濯洗剤「ブルースティック」

 この女性は、店の売れ筋第1位「ブルースティック」と呼ばれる洗濯石鹸の愛用者である。

 文字通り青色のスティックで、ユニフォームや靴下の落ちにくい頑固汚れをきれいにすると評判だ。

「Yシャツの襟の汚れを落とすのに使っています。結構、落ちます。靴下が分かりやすいかも。これで汚れを落としてから、さらに洗濯機に入れて洗っていますね。1本当たり100円以下で、値段的にも安いです」

 ブルースティックは、三浦半島にある横須賀刑務支所で製作され、3本組で275円(税込み、以下同)。令和元年度は「キャピックショップなかの」で約2600本、全国で約10万8000本が売れた。

売れ筋ナンバー1のブルースティック(3本組)

 スティック状のタイプは衣類にこすりつけなければならないため、液体版(305円)も開発され、これが売れ筋ベスト2位。オレンジ成分が配合された「ブルースティックオレンジ油入り」(130円)は3位と、上位3位はブルースティックが独占している。

 第4位にランクインしたのは細うどん(150円)、5位はキッチンクロス(160円)でいずれも横浜刑務所製。京都刑務所の特色が現れている友禅和紙のメモ帳(210円)は7位、折紙(135円)は9位だった。

©文藝春秋

 このほか定番の人気商品は、「獄」のロゴがプリントされた前掛けや巾着袋などの「マル獄シリーズ」製品(函館刑務所)で、矯正展では取り合いになるほど。秋田刑務所で作られた桐素材のまな板もよく売れている。

 

 来店客の中には、商品に思い入れがあったのか、宮城刑務所製の作務衣を前に涙を流す女性(77)もいた。

「お知り合いの詩人によくここで作務衣を買ってあげていたんです。でも去年の11月に亡くなってしまい、もう買ってあげることができないと思ったら涙が出てきて。その詩人の方は『何か原因があったからそう(犯罪者)なってしまった。いつかは更生できるように我々が見守るんだ』と熱く語っていました。海外に行く時もその作務衣を着ていましたね」

 そう語った女性は、便箋と封筒を購入した。詩人の知人たちに、手紙を送って近況を報告するのだという。

 写真=水谷竹秀