NiziUが抱える「少女」イメージの危うさ
ここで重要なのは、この欧米で受け入れられたスタイルを、アジアの若い世代も求め始めている点である。
そのため、NiziUが「ファン依存」的な態度をとり続けていては、トレンドに遅れてしまう。ややもすれば、古くさい「女性性」に閉じ込められる恐れがある。
特にNiziUは、ファッションスタイルでも「少女」というイメージに閉じ込められている。その少女っぽさに象徴されるイメージは、私には、若い世代が自ら作りあげたというよりは、型にはまった古いものに感じられる。これはNiziUのプロモーションビデオでも顕著だろう。少女的な感性ばかりにこだわると、愛やロマンスといったテーマに閉じ込められてしまい、ファン層が限定されかねない。
もちろん、BLACKPINKのスタイルに短所がないわけではない。
その強烈な個性から熱狂的なファンが多く生まれている反面、大衆性は弱まっている。BTSは「Dynamite」や「Butter」などキャッチーな楽曲を発表することで大衆化戦略に出て成功したが、BLACKPINKはいまだに大衆化からかけ離れた戦略を取っている。しかも、BLACKPINKはファンが女性に集中している。だからこそ、インターネットでマニア的なファン層を強力に集められるという強みはあるのだが、ビルボードの「HOT100」など大衆性が問われる場ではBTSに比べると相対的に弱い。
「一つのアイデンティティ」では欧米で戦えない
では、そのBLACKPINKの弱点を踏まえた上で、今後、NiziUはどのような戦略を取るべきなのか。
NiziUには、SMエンターテインメントのボーイズグループ「NCT127」の例が参考になると私は考えている。NCT127が試みているような、多彩なタイプのアイデンティティが必要なのだ。
NCT127は、それぞれの地域に合わせてイメージを変えている。南米では、ポップな情熱的なダンス風に合わせてみたり、東アジア向けに、ファンからの羨望の心理を生かしたスタイルを追求したりする。