不器用さは周りにバレる
身体的不器用さについては、発達性協調運動症といった疾患概念があります。
協調運動とは、別々の動作を一つにまとめる運動です。例えば、皿を洗う時、皿が落ちないように一方の手で皿を掴み、もう一方の手でスポンジを握って皿を擦るという、2本の手が別々の動作を同時に行う高度な協力が必要です。これが協調運動です。身体的不器用さはこの協調運動に障害があるため、粗大な協調運動(身体の大きな動き)や微細な協調運動(指先の動作)に困難を来すのです。5~11歳の子供で約6%いるとされています。
身体的不器用さは、協調運動が必要とされる日常生活上の身体活動の獲得や遂行に困難さを生じます。手先の器用さと言われる微細運動には、靴紐を結ぶ、ボタンをかける、といった身体的な自立をする上で重要な動きや、字を書く、ハサミを使う、折り紙を折る、楽器を演奏する、といった創作的活動に必要な動きがあります。身体的不器用さは、スポーツが苦手というだけでなく、身辺自立や創作活動などに支障を来すことも懸念されます。かつて身体的不器用さは成長につれ自然消滅すると考えられていましたが、青年期に入ってもなお持続している例も数多く報告されています。
しかも、身体的不器用さはとても目立ちます。学校では、たとえ算数のテストで30点を取ったとしても、みんなにバレないように隠せば算数が苦手なことは誰にも分かりません。しかし、身体の動きは別です。体育の時間や運動会などの場では、みんなに不器用さがバレてしまいます。みんなでタイミングを合わせて行うダンスなどの運動では、いつも足を引っ張ることになるので、みんなから責められます。それで自信を失ったり、イジメの対象になったりする可能性も生じます。特に発達障害や知的障害をもつ子どもたちは、身体的不器用さを併せもつ比率が高いとされており、医療少年院の少年たちもその例外ではありませんでした。