(1)「5階からのお達し」とは?
では、この官邸細部を『シン・ゴジラ』に絡めて見ていこう。首相官邸と一言で言っても、敷地内には様々な施設が含まれている。
まず最も大きな建物は官邸本館。首相や官房長官、官房副長官といった政府要人の執務室が最上階の5階に置かれている。劇中、マスコミ記者達が政府の対ゴジラ防衛計画について会話をしているシーンで、「5階からのお達し」というセリフがあるが、これは計画が総理・官房長官といった政権中枢の意向だと示唆している。
官邸4階には、閣議室や劇中でアクアトンネル浸水事故の対策会議が開かれた大会議室といった内閣の意思決定を行う施設、首脳会談で使われる特別応接室、総理補佐官や内閣官房参与といった役職の執務室がある。
(2) なぜエントランスホールが3階に?
3階には国会議事堂側に正面玄関ホールや事務室が設置されている。劇中でも「首相官邸3階 エントランスホール」と字幕が出てくるので、なぜ3階にエントランスが置かれているか気になった方もいるかもしれない。首相官邸は斜面に建設されているため、正面にあたる国会議事堂側は3階に正面玄関がある構造になっているためだ。
このため1階、2階は半地下となっており、赤坂側1階には職員や業者が出入りする西門がある。
3階以上に事務機能が集約されているのに対し、2階はロビー(ホワイエ)や大ホールといったスペースがおかれている。劇中で巨大不明生物特設災害対策本部(巨災対)が置かれた会議室があるのは2階と設定されている。1階は劇中でもたびたび登場し、ニュースで見かける機会の多い記者会見室や官邸記者クラブといった広報機能が置かれている。
(3) 危機管理センター内部の様子は?
地下1階は、『シン・ゴジラ』前半での主な舞台となる危機管理センターが置かれている。各省庁からの要員が参集するオペレーションルームや各会議室等から構成され、緊急事態への対処が行われる。
安全保障上の問題から、危機管理センター内部の様子はほとんど伝わっていない。劇中で登場した会議室は撮影のために作られたセットだ。また、巨大なモニタが置かれ各省庁からの要員が参集したオペレーションルームは、首都直下地震が発生した際に現地対策本部が設置される、有明にある東京湾臨海部基幹的広域防災拠点のオペレーションルームを撮影に使っている。
有明の丘基幹的広域防災拠点オペレーションルーム - Spherical Image - RICOH THETA
東京湾臨海部基幹的広域防災拠点オペレーションルームの全天球写真 ©石動竜仁
災害対策本部には国家としての対応を調整するものと、現地での対応を調整する災害現地対策本部がある。首相官邸の危機管理センターに置かれるのは前者で、有明の防災拠点に置かれるのは後者だ。首都直下地震の際でも、官邸の危機管理センターに地方自治体職員が入ることはまずないが、有明に置かれる災害現地対策本部では、中央省庁の職員とともに周辺県庁や自治体職員が調整にあたるようになっている。
通常、現地対策本部は道府県庁に置かれるが、東京についてはあらかじめ専用施設として用意されている。また、この施設は防災体験学習施設『そなエリア東京』としても公開されており、一部は見学可能だ。