文春オンライン
「僕はそういう表現は使わないです」大谷翔平が“二刀流” という言葉を避ける“決定的理由”

「僕はそういう表現は使わないです」大谷翔平が“二刀流” という言葉を避ける“決定的理由”

『大谷翔平 野球翔年 I 日本編2013-2018』より #1

2021/08/22

source : Sports Graphic Number

genre : ライフ, スポーツ, 読書

note

6イニングで17奪三振

 岩手県奥州市を流れる胆沢川。

 その河川敷に水沢リトルのグラウンドがある。東北自動車道と水沢東バイパスに挟まれた、二面のグラウンド。65mのフェンスがあり、ライト側に川が流れている。ここで大谷は中学1年までの5年間、練習に励んできた。ライト側の川の手前には木が並び、その枝に手作りのネットが張られている。浅利さんが説明してくれた。

「翔平ネットです。お父さんたちが一生懸命、作ったんですけど、まったく役に立ちませんでした。翔平は左打ちですから、あの子がバッティング練習をすると全部、川に飛び込んでしまうんです。ですから練習では、アウトコースに投げるからレフトへ打てと言いました。翔平は引っ張り禁止です。何しろボール1個、750円ですよ。翔平に気持ちよく、パキーン、パキーンと打たれたら、チームのボールが何個あっても足りません」

ADVERTISEMENT

 リトルリーグの最終年、大谷が中学1年のときの水沢リトルは県内で無敗。東北大会も勝ち抜き、全国大会出場を決めた。その準決勝で大谷はとんでもないピッチングを披露する。6イニング制の試合、18のアウトのうち17を三振で奪ったのだ。打たれたヒットは1本、フォアボールはゼロ。大谷が三振を取るたびに、球場はシーンと静まりかえったのだという。監督としてベンチにいた父の徹さんは、息子の才能をこんなところに感じていた。

©文藝春秋

父も感心する野球センス

「翔平は、教えたことがすぐできるようになりました。その早さには感心しましたよ。教えてもらったことを練習したからと言って、すぐに身につくものじゃないのに、こういう打ち方をしなさい、こうやって投げなさいと教えると、すぐにできるようになる。あれを野球センスって言うんですかね」

 キャッチボールをすれば、みんなが助走をつけて投げ上げ、ツーバン、スリーバウンドでやっと届く距離を、小学生の大谷は立ったまま、ライナーのノーバンで投げた。打てば、引っ張り禁止という環境の中で、強い打球を逆方向へ打つ技術を身につけた。大谷一人が、投げても打ってもずば抜けている。だから、と浅利さんは言う。

「二刀流だって、翔平を小さい頃から知っている私たちにはちっとも不思議じゃない。子どもの頃から誰よりも上のレベルで投げてきたし、打ってきたんですから、栗山監督に両方やってみるかと言われて、無邪気に喜んだんだと思います。翔平は野球小僧ですから、おそらく二刀流だの何だのってことは難しく考えてませんよ(笑)」

【続きを読む】大谷翔平(23)が語ったスケールの大きすぎる“理想の将来像” 「てっぺん…どこなんですかね」

大谷翔平 野球翔年 I 日本編2013-2018

石田 雄太

文藝春秋

2018年6月14日 発売

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。

「僕はそういう表現は使わないです」大谷翔平が“二刀流” という言葉を避ける“決定的理由”

X(旧Twitter)をフォローして最新記事をいち早く読もう

文春オンラインをフォロー

関連記事