光岡自動車のラインナップには、曲面が深く入り組んだデザインの車種が多く見られるが、そのような外観を実現するうえでFRPは欠かせないと、青木氏は語る。
一方で、生産規模によってはFRPを素材として採用しないこともある。量産車種として企画された「バディ」もそのひとつだ。
「バディは生産性を高めるために、溶接の手間なく、部品交換で作れる設計になっています。素材もPPやABSなど、金型で成形して部品が量産できるものをメインに作っています」(渡部氏)
PPやABSは耐衝撃性の高い樹脂であり、金型を用いた射出成形により見た目の品質も揃えやすいため、量産に適している。
「生産途中で作り方を切り替えるのは難しいので、やはり企画段階で作り方も考えることになりますね。ある程度市場規模を見据えて勝負をかけるというか。そこから、生産体制に合わせて設計をしていくようなイメージです」(同前)
企画の段階から、市場規模を想定し、それに適した生産体制を鑑みつつ、デザイン面と素材・工程とをすり合わせていくことが求められるのである。
塗装へのこだわり
光岡といえば高いデザイン性であるが、そのこだわりは豊富なカラーバリエーションにも見て取れる。顧客には「オリジナル」を求める層が多いため、カラーリングによる個性の演出も重要になるのだ。
かつてのオロチは、なんと300色にも及ぶカラーが設定されていた。総生産台数はわずか数百台に満たないことを考えると、ほとんど1台ごとのオリジナルと言っても過言ではないだろう。
「色って『その人にしかないもの』じゃないですか。ファッションでも着たくない色は絶対着ないですし、そういう意味ではカラーは大切にしていますね」(青木氏)
オロチほどではなくとも、光岡の多くの車種には生産規模に見合わぬカラーバリエーションが設定されている。バディはモノトーン12色、ツートーン6色の展開であり、外装色に合わせて内装のアクセントカラーも変化する。生産台数を考えれば、同じ仕様を目にする機会は皆無に等しいと言える。
カラーバリエーションは基本的に、ベース車両とは異なるオリジナルのものが設定される。日産マーチが11色の展開であるのに対し、それをベースにしたビュートは43色を展開し、デザインに合わせたレトロな色合いも設定されている。「自分だけの仕様」を求めるニーズに対し、正面から応えていく姿勢が見て取れる。