日本で10番目の乗用自動車メーカーである光岡自動車は、「日本でもっとも小さな自動車メーカー」でもある。富山県内の工場で、1日1台のペースで自動車を生産する。作業はすべて、職人たちの手作業だ。
現在ラインナップされている車種は、ベースとなる他メーカーの車両を改造し、内外装をレトロ調に仕上げたものとなっている。そのため工場では、車が一度分解され、あらたにボディを組み上げるという「車の整形手術」ともいうべき作業が行われていることになる。
一体その過程は、どのようなものなのか。同社の執行役員であり、営業企画本部長の渡部稔(わたなべみのる)氏と、企画開発課の課長としてデザインを務める青木孝憲(あおきたかのり)氏の案内により、工場への潜入取材を行った。
まずは“新車”をバラバラに
工場の製造工程はまず、買ってきた車両のパーツを取り外すところから始まる。
当然、ベースになるのは真新しい完成車両である。躊躇しそうなものだが、工程上取り除かなければならない部品は遠慮なく取り外してしまう。
ベース車両の存在は、当然デザイン上の制約ともなるわけだが、両者の兼ね合いについて渡部氏はこう語る。
「ベース車とデザインのどっちが先か、明確に決まっているわけではありません。デザインとベース車を行ったり来たりしながら、まとまっていくような形ですね。ベース車が案に向かなければ切り捨てられていって、案があってもベース車がなければ諦めることになります」
実現したいイメージと、現にラインナップされている車種を照らし合わせながら、「これならあの車種で実現できる」という形で進めていくわけである。
さらに、ベース車両の「モデルチェンジ」も留意しているポイントだという。ベースに選んだ車種がすぐにモデルチェンジしてしまえば、当然車両を手に入れることもできなくなる。
一方で、ビュートのような「定番車種」は、ベース車両のモデルチェンジに合わせて代替わりするケースもある。ビュートは1993年の登場から、ベースであるマーチとともにモデルチェンジし、現在3代目として生産され続けている。