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2021/12/04

団塊の世代の社会保障費激増を今後どうやって乗り越えるか

 夫婦で最低賃金の収入しかなかったならば、月額30万円も手取りがありません。親の介護があったり、子どもの教育があったりすれば、それは若者の貧困の問題というよりは日本社会全体の持続性の問題になります。「経済力がなくて結婚できないよ」という若者の切実な人生上の問題に回答できる経済政策にはなり得ません。これをベーシックインカム導入のようなセーフティネットや「正規が非正規を搾取している」というようなサプライサイド経済学の観点から竹中平蔵さんが議論したところで、「それは新自由主義的な議論ですよね」という話になってしまいます。それで日本経済の生産性が上がり、経済が良くなる保証はないのです。

 では、竹中平蔵さんの言う経済論を否定して、岸田文雄さんの打ち出している「新しい資本主義」のもとで金融所得に増税したり、炭素税を導入したりするような方針を打ち立てて上手くいくのかと言われれば、それもまた不透明です。日本維新の会がベーシックインカム導入で政策議論を仕掛けていますし、玉木雄一郎さん率いる国民民主党も積極財政で国富創出をという主張を繰り広げていますが、今後実際に日本経済に起きることは、人口最大ボリュームの団塊の世代が後期高齢者入りするタイミングで激増するであろう社会保障費をどうやって乗り越えるかです。

 いまのままだと薬も届かなくなるし、コロナとは無関係に医療は崩壊しかねないところへ、年金では暮らせない高齢者世帯が貧困に転落し、結婚できなかった&伴侶に先立たれた独居老人が地域社会のお荷物となって、一気に生活保護のようなセーフティネットを頼ってくる近未来がやってきます。

©iStock.com

総人口における生産年齢人口は6割を切った

 ちょうど11月30日に国勢調査の結果が確定しましたが、総人口における生産年齢人口が6割を切ってしまいました。経済成長がなければこれからスキルを磨く若者ほどおカネが回ってこない今後の日本経済は、本来は改革を断行して合理性を追求し、是が非でも成長路線に持っていかないと駄目な局面になっています。

生産年齢人口、ピークの95年比13.9%減 国勢調査確定値: 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA2992J0Z21C21A1000000

 

 竹中平蔵さんの説く、歳入庁議論も踏まえた国税への一本化と行政の合理化は必要な議論だとは思います。税金と社会保険料と年金をバラバラに徴収することがどれだけ非効率なのかは、確定申告や年末調整をまめにやっている人であればよくご理解いただけるでしょうし、天引きされる社会保険料が馬鹿高くて実質的に税金のような状態になっているのも皆さんご存知でしょう。以前、金融庁が老後に2,000万足りないと試算して騒動を起こして馬鹿にされていましたが、竹中さんが言う前から、税と社会保障の一体改革の議論では、すでに三党合意があった前提で話が進んできたことは重ねて指摘されるべきです。

 また、きょうび「能力以上に給料をもらっている正規と、働きに比べてお金をもらえない非正規」というような、あまり意味のない対立軸で格差を語るのは竹中平蔵さんの悪い癖だろうと思います。そもそも、その「生産性に比べてお金がもらえない非正規」がいるのだとしたら、それをピンハネしている人材会社がいるからであって、むしろ企業は非正規労働力に対して正社員以上に労賃を支払っています。そのピンハネをしている企業の会長が竹中平蔵さん本人なのに、なぜ第三者のテイで正社員と非正規との格差を煽っているのか理解できません。せめて、企業が解雇しやすく、労働者も生涯を通じて再教育を公費で受けられ、自由に働き先を選べて、労働基準監督署がしっかりと適法労働かどうかを監視できる体制を作ろうというほうが、よほど我が国の労働政策においては合目的的ですし、経済効率も上がるはずです。

 むしろ公務員が減り過ぎて、やるべきことに対して殺人的に業務が積み上がってしまい現場が回らなくなっている霞が関や地方行政、あるいはブラック前提でシフトが組まれている医師や看護師など医療機関での実態について、竹中平蔵さんはもう少し認識を新たにしたほうが良いのではないかと思います。

「危機感を持つべきだ」というのはもっともなんですけれども。

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