最も身近で、それでいて謎めいている私たちの体。その驚くべき仕組みと医学や現代医療についての基本的な知識を1冊で学べる本が話題になっている。
著者はTwitterで9万人を超えるフォロワー数を誇る現役外科医。ネットで鍛えた丁寧でわかりやすい情報発信力は本でも健在だ。
「コロナ禍をきっかけに、大勢の人のあいだで『免疫とは何か』『ワクチンが効くメカニズムとは』といった人体の疑問を考える機会が増えている実感がありました。くわえて、医療や医学に対する関心も非常に高まっていると感じていたんです。そうした興味に『そもそも医療の根底にある医学とは何を希求している学問なのか? その発展の歴史はどういうものだったのか?』といった根源的な視点にまで遡って応えたいと考えて企画した本です」(担当編集者の田畑博文さん)
1項目あたりの分量は短く、文章も柔らかい。コッホや華岡青洲など、医学の発展に尽くした“人”にスポットを当てた記述も、読み易さに一役買っている。
「科学の知識をただ伝えるだけだと無味乾燥になりがちなので、その背景にある“人”の存在を感じられる本にしようと意識しました。教養書では珍しく、読者の約6割は女性です。男性は筋トレなど体の外側に目が向きがちで、内側への関心は女性の方が強いのかもしれませんね」(田畑さん)
2021年8月発売。初版7000部。現在7刷16万部(電子含む)