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 実験の結果、答えをのぞき見した子どもと、のぞき見しなかった子どもの割合は、丁度半分だということがわかりました。答えをのぞき見しなかった子どもの割合は年齢が上がるほど多く、「いけない」と言われたことは守るという道徳心が、年齢とともに醸成された結果かも知れません。

 一方、答えをのぞき見した子どもは、そのほとんど(80人弱)がウソをつきました。さらに、年齢が上がるにつれ、巧みなウソをつく傾向にあることがわかりました。年齢の低い子どもは、なぜクイズの答えがわかったのかを尋ねると、黙ってしまったり、曖昧な理由付けをしますが、年齢の高い子どもは、「最近、学校で習ったばかりだから知っていた」というような巧みな理由付けをしたのです。日常のなかでこうしたウソをつかれたら、真偽を判断することは難しいかも知れません。

 では、そうした子どものウソにどう接したらよいのでしょうか。

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子どもがウソをついた理由を観察

 まずは、子どもにウソをつかせない環境作りが大切なのだと思います。本実験で言えば、答えが書いてあるカードを子どもの手の届くところにおかないことでしょう。

 人は誘惑に弱いものです。テストで子どもがどんなときにカンニングするかを検証した実験では、不正が露呈する可能性が低ければ、その子の成績の良し悪しに関わらず、カンニングをする傾向にあることがわかっています。つまりは、ウソをつく機会を生み出さない環境作りが大切なのです。

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 それでもなお、子どもがウソをついてしまうとき。そんな時は、そのウソの性質や、背景にある要因について考える必要があるでしょう。そのウソは、利己的でしょうか。利他的なウソでしょうか。なぜウソをつかなくてはならなかったのでしょうか。本当に相手を騙す意図を持ち、発せられた言動でしょうか。子どもの認識と事実が異なっているだけかも知れませんし、非道徳的なウソかも知れません。いじめを受けている子どもが、いじめられていることが恥ずかしくて、あるいは、親に心配かけまいとウソをつくこともあるでしょう。よくよく子どもを観察し、子どもの声に耳を傾けてあげて下さい。あなたの観察力と接し方が、子どもを救うことになるかも知れないのですから。