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「うちらみたいな居酒屋は『死ね』って言われてるのと同じなのかな」大阪で大衆酒場を営む店主がこぼした“思いがけない本音”

『「それから」の大阪』より #1

2022/03/20
note

 

うちらみたいな居酒屋は「死ね」って言われてるのと同じなのかな

 ──「大衆食堂スタンドそのだ」も「台風飯店」もコロナ以降に支店が着々と増えています。この時期(2021年7月)でも勢いが変わらないように見えます。

 系列店も入れると今で15店舗あるんですけど、うちは宴会客頼りじゃないので、そこが大きいかもしれないですね。コロナがなかったら、もっと今よかったかなとも思うんですけど、まあしょうがないですね。とにかく今は、働いてくれてるみんなの給料ももちろんですけど、ボーナスも払いたいし、とにかく経営を安定させたいです。

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2020年12月にオープンした「スタンドそのだ」「台風飯店」の天王寺店(2021年7月撮影) 撮影・スズキナオ

 ──次々に状況も変わるし、お酒を出すお店は本当に今、大変ですよね。

 あんまり自分は声高にこういうことは言いたくはないんですけど、補償金も入ってこないし。博多でも今「大衆食堂スタンドそのだ」と「台風大飯店」をやってるんですけど、そっちの補償はすぐ入ってきたのに、大阪はまだで。今のルールって、うちらみたいな居酒屋は「死ね」って言われてるのと同じなのかなと思ってます。だけど「死ね」って言われたからって死にたくないじゃないですか。だからなんとか自分らなりにやっていくしかないです。

 ─大阪の古い酒場には刺激を受けますか?

 ここ(京橋の「京屋」)なんかもう、天然ものですからね。好きですね。うちなんか養殖ものだと思ってますから(笑)、まだまだです。でもこういう天然ものの店が減ってきてるなっていう感じはしてますね。鶴橋とか今里、深江橋あたりはまだまだ面白い店がありますけど。

 ─大阪に今後もお店を増やしていく予定はありますか?

 天王寺に「スタンドそのだ」と「台風飯店」を出したんですけど、僕は大阪で、天王寺のあそこが一番いい場所だと思っていて、あそこができてたらもういいかなっていうのが正直ありますね。これ以上ない場所に出せたんで。

 大阪に長く住み過ぎてしまったかなという気持ちがあるんです。土地勘がつき過ぎて、ここに店を出したらいかんとか、そういうことがわかってきて、冒険ができなくなってきて。今は博多の店の方に行って、博多の人とか店からいろいろヒントをもらってる感じです。

「それから」の大阪 (集英社新書)

スズキナオ

集英社

2022年2月17日 発売

「うちらみたいな居酒屋は『死ね』って言われてるのと同じなのかな」大阪で大衆酒場を営む店主がこぼした“思いがけない本音”

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