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脱サラして飲食業界へ

 オーナー・園田崇匡さんによると、「大衆食堂スタンドそのだ」は“自分たちの世代の大衆酒場を作りたい”というコンセプトから生まれたものだという。

 サラリーマンをしていた園田さんが飲食業界に足を踏み入れることになったのは、音楽イベントの会場内に設けられたフードコーナーでラーメンを作ってふるまったことがきっかけだったそうだ。音楽好きの園田さんはDJとして大阪のクラブに出演していたが、あるとき、ふと、DJではなく自分が好きなラーメンを作るという形で参加してみようと思った。

 園田さんの出身地は広島県福山市。地元の「一丁」という店のラーメンが大好きで、それをイメージしつつ、いわゆる「尾道ラーメン」のスタイルを踏襲して自分なりに仕上げたラーメンが予想以上の好評を得たという。

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 以降、あちこちのイベントで同じようにラーメンを作るようになり、それを食べた人々の絶賛の声に背中を押されるようにして脱サラし、神戸に「中華そば そのだ」をオープンしたのが2012年のことだった。開店当初は客足が伸びず、飲食業界の厳しさを身をもって知ることになった。1日の客が3人で、売り上げが2000円ほどの日もあったという。

 しかし、音楽仲間たちが足繁く通ってくれたこと、SNS上で店の情報を広めてくれたことなどもあり、なんとか店を続けることができた。2013年には大阪市の玉造に店を移転し、そのころからラーメン店とは別に居酒屋を開店することを考え始めたという。まずはその当時のことについて園田さんにお話を伺った。

「大衆食堂スタンドそのだ」のオーナー・園田嵩匡さん 撮影・スズキナオ

 ──「大衆食堂スタンドそのだ」を始める際、どんな店を作ろうと考えていたんでしょうか。

 その当時(2013~15年頃)、大阪では魚と日本酒をメインにして、接客に力を入れているようなお店が流行ってたんですよ。そういう店の逆張りをしたっていう感じがあったんです。肉とレモンサワーと不愛想みたいな(笑)。まあ、不愛想ということはないですけど、お客さんにぴったりついて接客するような感じじゃなくて、もっとニュートラルに入れるような店にしたいと。

 個人的に独身サラリーマン時代が長かったんですけど、仕事で疲れてるからしゃべりたくないっていうときもあるじゃないですか。久々に行って「最近来てくれんやん」とか言われるのがすごい嫌で(笑)。チェーン店の「やよい軒」みたいな、ああいう場所で飲んでいる方が落ち着くんで、それを目指したところもありました。