昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載テレビ健康診断

星野源がホスト役、開始3分足らずで自ら設定をぶち壊し…「好き」が無限に広がる音楽番組――てれびのスキマ「テレビ健康診断」

『星野源のおんがくこうろん』(NHK Eテレ)

 J・ディラ、ジョージ・ガーシュウィン、アリー・ウィリス、中村八大。

 最後の中村八大はともかく、どれだけの人が彼らの名前を知っているだろうか。いずれも現在のミュージックシーンに多大な影響を与え続けている世界を代表する音楽家たちだ。彼らにスポットを当てた番組が『星野源のおんがくこうろん』(NHK Eテレ)だ。タイトルのとおり、ホスト役は星野源。クレジットによると彼は「構成」も担当している。

星野源 ©文藝春秋

 通常、音楽番組で取り上げられるのは、“裏方”ではなく、表舞台でパフォーマンスするアーティストがほとんど。しかし本来、音楽の要を担っているのは作曲家や編曲家だ。この番組では、そういった人物とその影響をニュース番組のようなセットで、丁寧に紐解いている。といっても「硬い」印象を与えないのが星野源たる所以だろう。「かいせついん」の2人は可愛らしいパペット。レコードを操作する姿がなんとも愛らしい。パートナーはアナウンサーの林田理沙。東京藝術大学大学院音楽研究科出身らしく八大についても「弱い音の中でもピアノのタッチの差で打楽器的に世界を巧みに描いている」などと専門的に語ることができるため適役。それでいて各人物のエピソードを紹介するセリフ読みに感情を込めるなどそこはかとなくふざけている。星野は初回の番組開始3分足らずで「ニュース番組的な硬さはこっからもうなくていいと思います」と自ら設定をぶち壊す自由さ。自身が「メジャー」にいることの強みを最大限活かし、普通、テレビではマニアック過ぎると言われて取り扱えないようなことを軽やかに番組化してしまったのだ。

 この日も中村八大を「上を向いて歩こう」などの作曲家としてだけではなくジャズピアニストとしての側面も取り上げる。すると八大が、第2回で取り上げたガーシュウィンに影響を受けていたことがわかる。時に、まったく趣向が異なるようなモノを好きになることがある。けれど、よく調べてみると、それぞれの作り手が共通の人物から影響を受けているということがわかり合点がいくといった経験は誰しもあるのではないか。そうした“つながり”こそ、この番組で見せたいもののひとつなのだろう。星野源が作った「ドラえもん」のイントロも八大作曲の「『笑点』のテーマ」にインスパイアされたものだという。その八大の曲はニューオリンズ発祥のリズム「セカンド・ライン」をベースに作られている。だからニューオリンズを代表するプロフェッサー・ロングヘアの曲を初めて聴いた時にすんなり耳に入ってきたのは八大のおかげだと星野は言う。「好き」がつながり、「好き」が無限に広がっていく。それを体感できる番組だった。

INFORMATION

『星野源のおんがくこうろん』
NHK Eテレ 全4回 放送終了
https://www.nhk.jp/p/ongakukouron/ts/M7W7W1446Z/

ツイッターをフォローして最新記事をいち早く読もう

週刊文春をフォロー