いじめた側に配慮か…市教委は「受験が終わってからでいいですか?」
母親は市教委に電話をした。その後、市教委は、いじめ防止等対策推進法の重大事態と判断し、調査委を設置することになる。
「担当者は『すぐに立ち上げます』と言いました。ただ、『調査は、受験が終わってからでいいですか?』とも言われました。受験生にはいじめた子も入っています。なぜ気を使わないといけないのでしょうか。市教委は何を守りたいのでしょう。いじめた側を守りたいのでは、と思ったんです」
調査委のメンバーは、大学教授や弁護士、臨床心理士、医師ら6人。特別委員が2人。委員長は文科省のいじめ防止基本方針策定協議会やいじめ防止対策協議会、児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議などに関わっている人物だ。「公平性・中立性」が担保されているといえるか疑問もあるが、弁護士などの支援もない母親としては、「おまかせ」をした。
自殺との因果関係を省かれてしまった報告書
報告書には「保護者との意見交換の内容を踏まえて、本件をいじめ防止等対策推進法第28条1項2号に定める『重大事態』として取り扱う」とした。つまり、ここで調査の目的は、いじめの有無と、いじめがあった場合、不登校と関係があったのかが調査範囲とした。自殺との因果関係はこの段階で省かれた。
「2020年1月に市教委と話し合いがありました。調査委員の選定方法についての説明はなく、『こちらがお願いしている人がいまして……』と言われただけ。遺族から推薦ができる話は聞いていません。また、『いじめと不登校の調査はしてほしい』とは伝えました。当然、トモコは亡くなっていたので、自殺との関連も含まれると思っていました。私は法律を知らないので、『(28条1項1号の)自殺に関連する調査』と、『(28条1項2号の)不登校に関連する調査』の区別は知りません。報告書が出てから、『不登校に関連する調査』だと知りました」