東京オリンピックの開会式から1年が経ちました。新型コロナウイルスの感染拡大による異例の1年延期を経て、2021年7月23日に開幕。8月8日までの開催期間は選手たちの活躍に日本国内も沸きましたが、その陰で開会式を巡る“辞任ドミノ”など問題も多発しました。今年の6月には大会経費の総額が1兆4238億円だったことも判明しています。あのオリンピックは一体何を日本に残したのかを振り返るために、オリンピック期間中(7月23日~8月8日)の掲載記事の中から、文春オンラインで反響の大きかった記事を再公開します。(初公開日 2021年7月25日)。

*  *  *

 23日にようやく開会式を迎えた東京オリンピック・パラリンピック。ここへの道程は混迷の極みだった。

 大会組織委員会の森喜朗前会長に始まり、佐々木宏氏、小山田圭吾氏、のぶみ氏、小林賢太郎氏と、主要関係者の不祥事や過去の不適切発言が次々と明るみに出て、辞任や解任が相次いだ。コロナ禍も日を追うごとに加速度的に拡大し、開会式を迎えた23日には感染者は4225人に。こうした状況下での開催に、SNSなどではいまだ多くの人が抗議の声を上げ続けている。

ADVERTISEMENT

 こうした状況も手伝ってか、大会スタッフとして活動するはずだった約11万人のボランティアから辞退が相次いだ。スタッフ確保のため、求人サイトなどで始まったのが五輪バイトの募集だ。

五輪バイトのために集まった ©️文藝春秋

口コミで集まった「大学生バイト」

 しかしそれでもスタッフは足りなかったようだ。穴埋めをする形で、口コミで集まった「大学生五輪バイト」が会場の至るところに大量に流入しているという。実際に五輪バイトをしているという大学生が証言する。

「五輪バイトは人材派遣会社で働くあるサークルの卒業生が、『人が足りないので学生を集めてほしい』と、人脈の広い後輩の大学生に声をかけたのがきっかけで、学生の間に広まりました。ギャラがよくて、学生の間では“オイシイ”と話題になっています。僕の職場では朝7時から夜11時までのフルタイムで働くと日給2万6000円。拘束時間は長いですが、普通のバイトと比べて1日で効率よく稼げるんです」

©️文藝春秋

 彼らの業務内容は競技場に出入りする人々への検温や消毒だが、ほとんどの競技が無観客になったことで実働時間は激減。「いるだけで金が入る楽なバイト」(同前)なのだという。

「フルタイムで働く場合は、炎天下も含めて1日16時間、競技場に出入りする人の検温をします。大変に思うかもしれませんが、実は実働時間はその3分の1ほどなんです。出入りする関係者も僅かで、検温する人自体がほとんどいない。無観客が決定してもバイトの人数は変わらなかったので、人余りで30分働いて1時間休憩、なんて持ち場もあるようです。

 社員さんが休みを決める場合もあれば、バイトに休憩の取り方を任せてくれる人もいます。僕の場合だと、働いたのは拘束時間の半分くらい(笑)。特にサーモグラフィーで検温するバイトは座っているだけ。暇すぎてバイト中に簿記3級のテキストを読み切ったと自慢している人もいました」