【3】長期間の恋人役で“錯覚”する
これはドラマや映画の撮影でもよく言われることだが、恋人役を演じることによる錯覚の影響も大きい。アイドル出身女優はヒロイン役に抜擢されることも多く、実際に恋人役から付き合った例も少なくない。
ある舞台女優がこの錯覚についてこう明かした。
「稽古から本番まで数カ月間、毎日役に入り込んで相手と恋人として接するわけです。そんなの、相手のことが好きなんじゃないかと錯覚してしまいます。キスシーンや抱き合うシーンなど、物理的に密着する機会も多いですから。それに恋人役同士は演技の擦り合わせなどで顔を見合わせる時間が他の役の人より長いんです。仲が深まるのも当然かなって思ってしまいますよね」
さらに、“舞台演技”がより俳優の魅力を引き出すこともあるようだ。
「舞台とドラマでは演技の仕方が全然違うんです。舞台では会場全体に響きわたるような大きく通った声を出さないといけないし、感情表現は大げさなくらい大きい。だから愛の言葉なんて、すごくドラマチックに聞こえてしまいます(笑)。動きも大きくてキビキビしますし、そんな姿に男らしさを感じて好きになっちゃう女優も多いですよ」(同前)
【4】恋心を育む長い時間「職場みたいな感じ」
そして取材した舞台関係者が“最大の理由”として挙げるのが「接する時間の長さ」だ。舞台は顔合わせから始まり立ち稽古、通し稽古などを経て本番まで約2カ月間、毎日朝から晩まで濃密な時間を過ごすことになる。
「テレビ番組やイベントは“日雇い”に近いので、共演者とはドライな関係で終わることが多いです。一方で稽古から本番まで数カ月をかけてみんなで同じ物を作っていく舞台の現場は“職場”の感覚に近い。だから共演者は “同僚”っぽくなっていく。
ドラマや映画も一定期間一緒に過ごしますが、舞台に比べると1日のなかで接する時間が短いんですよね。待ち時間には楽屋で過ごすこともできますし。これほど同じ共演者と長時間一緒に過ごすのは舞台仕事くらいなんですよ」
近しい人間関係のなかでは恋は生まれやすい。しかしその“弊害”はあるようだ。