「報告書にははっきりとは書かれていませんが、この点について、学校側と私たちで対立しているっていう風な書き方がされています」
また、学校で行ったいじめアンケートには、菜摘さんが書いたとされる回答が含まれている。報告書では、菜摘さんが書いたものか、保護者と学校で対立しているとの指摘もされている。
「アンケートを書く日に娘は学校へ行ってないです。あの時はかなりの適応障害の症状が出ており、暴力などの情報に触れると、手が震える状態でしたので、書けるわけない。字体も違います。アンケートにあるのはまるで、大人が子どもの字を真似したかのようです。数字から点の打ち方から何から何まで違うっていうのはちょっとおかしすぎますよ」
第三者委員会の「第三者性」が問題視された
10月に公表された報告書は、黒塗りの箇所は一部あるものの、必ずしも多くはない。
「黒塗り箇所が少なくなったのは、第三者委員会の部会長が頑張ってくださった結果です。教育委員会からすると、【女子児童】とか【発達障害】の部分も黒塗りと考えていたようです。そうしないと、『まるで差別しているように見えてしまう』というのです。しかし、私たちとしては隠す必要がないと思いました。駆け引きの結果、黒塗りが少ない状態で公表されることになったということです」
また、今回の調査は、市議会を巻き込んだものになった。設立された第三者委員会の「第三者性」が問題視されたのだ。文部科学省のガイドラインによると、調査委員の人選には被害児童生徒や保護者から要望ができるとされている。そのため、市条例に定められた“委員”以外から4人がメンバーに選ばれた。
強い意思を持って求めなければ「第三者委員会」の設置は難しい
「“委員会”の設置当初は、文科省のガイドラインを確かめてから、市教委に返事をするのが癖になっていました。80回ほどのメールのやりとりをしていましたが、論点がすり替えられていました。私たちが委員を要望することもできず、調査方法とかもこちらの要望が聞き入れられませんでした。
この問題が市議会で取り上げられたことで、開示請求しても明らかにならなかった『いじめアンケート』や市教委から市長へ報告する『いじめ重大事態報告書』が出てきました。その結果、文科省のガイドラインにもとづく『第三者委員会』ができました。まず、私たちが1人の委員をお願いし、その委員が他のメンバーを選びました。強い意思を持って求めていかないと、文科省のガイドラインによる『第三者委員会』を設置するのは難しいでしょうね」
第三者委員会の報告書を受けて、両親は所見を提出した。今後は、所見を市教委のホームページで公開するように要請していく。
いじめ重大事態が起きた時に、学校や市教委では調査委が設置される。しかし、自治体にとって初の調査委が設置されるときには混乱が生じる。条例が整備されていない場合や、仮に整備されていても文科省のガイドラインに沿っていないケースもある。さらに言えば、加害をした児童生徒側への対処も課題だ。それらの点について、議会も行政も考えていく必要がある。今回は、その一例に過ぎない。