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特異な“説”が発表される

 一般的に、ツキノワグマは人間を食べるために襲わない。そもそも臆病な性質で、人間の気配を察知すると逃げて行くものだという。同一グマかどうかは不明だが、定説に当てはまらない、戸沢村の一連の“人喰いグマ”は一体何が違ったのか? 何人かの識者の見解が新聞に載る中、気になる記事を見つけた。

「(前略)捕獲したクマの頭骨には損傷があり、強く興味を持ったT氏が調べてみた結果、次のことが判明した。

 事故発生以前に、戸沢村内で子グマが飼われており、その子グマは飼い主に大変なついていたが、成長して飼育できなくなったため、山に放すことにした。クマを山に連れ出し、放獣しようと試みたが、なついたクマは飼い主から離れようとしなかった。そこで、その飼い主は持っていた棒で、クマの頭を激しく叩くと、クマは泣きながら逃げて行った。

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 T氏は、その際に頭(頭骨)に傷を受けたクマが、成獣になって傷が原因で頭が痛くなり、そのことから、人に対して憎しみを抱くようになった結果、3人を死亡させたのではないか、と推測していた。(後略)」(『人身事故情報のとりまとめに関する報告書』(日本クマネットワーク)より)

 こんな童話めいたことが、実際に起こり得るものなのだろうか?