お気に入りのキャバ嬢と高級シャンパンを開ける様子を連日アップ
エクシアへの投資が急増した背景にはコロナ禍もある。多くの個人、事業者の中には、補助金で“コロナ太り”した者たちも少なくない。降って湧いた“コロナマネー”はもともと行き先を探していた。そこにエクシアの魅力的なパフォーマンスを見せつけられれば、カネの行き着く先はおのずと決まったようなものだった。
エクシアの膨張と比例するように、幹部らの行動も派手さを増して行く。自称“天才的なトレーダー”菊地翔はインスタグラム上では“かけるん”というハンドルネームで活動していた。お気に入りのキャバ嬢と高級シャンパンを開ける様子を連日アップし、一晩で数千万円を使うようなことも珍しくなかった。
2021年に放送された日本テレビ『それって⁉実際どうなの課』において、バブリーな生活を紹介されたのはエクシアの営業ヴァイス・プレジデント北川悠介だ。タレントが訪ねた北川の自宅は家賃125万円と紹介されていた。台所にはルイ・ヴィトンのストローがあり、シューズクローゼットは同じくヴィトンの靴で埋めつくされていた。メルセデス・ベンツのカスタマイズは2台あわせて6200万円。一般企業のサラリーマンでは到底考えられぬ生活ぶりだ。
極めつけは同社シニア・ヴァイス・プレジデントにして菊地に次ぐナンバーツーの関戸直生人だろう。2020年5月3日、《「エクシア合同会社」ナンバー2 関戸直生人による会社説明会と出資勧誘》と題された動画がYouTubeに投稿された。約1時間40分にも及ぶ関戸の独演会は、興味深い話題と要素がちりばめられていた。
動画の冒頭、関戸はいきなり自身の2020年3月の給与明細を公開する。そこには「差し引き支給額」として271037786円という数字が刻印されていた。位をつけよう2億7103万7786円である。年収ではない。月収だ。次いで関戸はこともなげに言う。
「今年だけでも税金は4、5億円は払っていると思うよ」
「来年中には1000億円を越えるかもしれない」
この動画の公開時点で、出資者は累計で4152人。出資総額は170億円と説明している。毎月10億円から20億円のペースで出資は増えており、このままのペースだと「来年中には1000億円を越えるかもしれない」とも語り、この驚異的な実績をこんなふうにたとえた。「簡単にいうと、100万円を出資すると、それが年間35万円から60万円増えるっていうイメージですね」
それだけ自信を持って薦めているし、自らの母や祖母も投資していると笑って見せた。動画の中の関戸は、終始自信に満ちている。申し込みはインターネットで簡単にできると前置きし、エクシアへの投資手続きはすべてシンプルだと主張した。
「解約もすぐできるし、利益出金申請もできるんで」
シンガポール法人は債務超過に陥っていた
月給2億7000万円の男の言うことはどこまでもいいこと尽くめだった。しかし、エクシアの莫大な利益の稼ぎ頭であるシンガポールの現地法人の決算書を見ると、エクシアの謳う驚異的なパフォーマンスや関戸の甘言がにわかに信じられなくなる。
シンガポールの現地法人「エクシアプライベートリミテッド」の2017年から2018年の決算書の「TOTAL ASSET」(資産)の項目には「4236シンガポールドル」と記載されている。当時の為替相場で1シンガポールドルはおよそ81円。つまり、同社の資産はわずか「34万円」に過ぎない。またその決算書の「TOTAL LIABILITIES」(負債)の項目には「115821」とあり、円換算でおよそ938万円の負債があることもわかった。
つまり、この時点でシンガポール法人は債務超過に陥っていたのである。そんな状態の法人を抱えるエクシアは、2017年と18年でそれぞれ43.84%、43.99%の利回りを叩き出している。