岸田文雄首相(65)が、昨年の衆院選に伴う選挙運動費用収支報告書には自らが代表の政党支部に「内装費用」などの名目で計約131万円を支出していたと記載しながら、政党支部側の政治資金収支報告書には収入として記載していないことが、「週刊文春」の取材でわかった。虚偽記載だとすれば、政治資金規正法違反になる。岸田事務所は取材に対し、誤った記載をしていた事実を認めた。
岸田首相を巡っては、「週刊文春」11月24日発売号で、昨年の衆院選に伴う選挙運動費用収支報告書に宛名や但し書きが空白の領収書を94枚添付していた問題を報道。目的を記載した領収書の提出を定める公職選挙法に違反している疑いがあると指摘した。これに対し、首相は「適切な支出」とする一方、領収書の不備を認め、原因については「出納責任者の確認漏れ」などと説明している。
今回、新たに発覚したのは、その選挙運動費用収支報告書に関する別の疑惑だ。
昨年の衆院選の投開票日は10月31日。その6日後の11月6日、岸田首相は選挙運動に関連する「内装費用」として約105万円、「賃貸料」として約26万円の計約131万円を、自らが代表の「自由民主党広島県第一選挙区支部」に支出している。当然、支払いを受けた同支部は、その収入を政治資金収支報告書に記載しなければならない。ところが、同支部の収支報告書(昨年分)には当該の記載が見当たらないのだ。すなわち、岸田首相が代表を務める政党支部が、適切に選挙運動に関する収入を記載していないことになる。
他方で、岸田首相の関係政治団体「岸田文雄後援会」の政治資金収支報告書(昨年分)には、「内装費用」として、「岸田文雄選挙事務所」から計約131万円の収入が記載されていた。これは、選挙運動費用収支報告書に記された「自由民主党広島県第一選挙区支部」宛の支出と同額だ。
しかし、選挙運動費用収支報告書に記された支出先は、あくまで「自由民主党広島県第一選挙区支部」であり、「岸田文雄後援会」ではない。実際、選挙運動費用収支報告書には、同支部が「岸田文雄選挙事務所」宛に発行した計約131万円の領収書も添付されている。なお、同報告書に添付された領収書には宛名や但し書きが空白の“空白領収書”が目立っていたが、当該領収書は宛名が「岸田文雄選挙事務所」と明記されている。
政治資金問題に詳しい神戸学院大の上脇博之教授が指摘する。