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白血病の84歳女性が“死の6日前”にしみじみと伝えた言葉は…自宅で看取った娘が涙ながらに明かす「母の最期」

白血病の84歳女性が“死の6日前”にしみじみと伝えた言葉は…自宅で看取った娘が涙ながらに明かす「母の最期」

『実録・家で死ぬ 在宅医療の理想と現実』より #1

2022/12/08
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 その後、表立って「退院」を求められることはなかったものの、病院側と意思疎通がとれなくなって。退院を求めた医師はあとから病院の副院長であることがわかり、私が病院に行った際に挨拶をしてもあからさまに無視されるようになりました。完全看護なのに母の分の料理だけ出されなかったことも……。指摘すると、「あら1つ残っていておかしいと思ったのよ~」という具合です。母は耳は遠かったですが、ボケているわけではありません。次第に「この病院はいやだ」と言うようになりました。

弟の強い希望で余命と病名は告げず

「年末年始は家で過ごしたい」という母の希望もあり、2016年12月下旬に退院し、無事年越しはできたものの、年明けにインフルエンザを発症して緊急入院。しばらくして退院したものの、今度はふとしたきっかけから鼻血が止まらなくなりました。病院を受診させようとすると、母が拒み、病院側も「来るな」という態度。ですが病状が進んだ白血病の患者を診てくれる病院がほかにありません。

「もう家で看るしかないだろう」

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 2017年1月末、弟がそう決断したため、私も、姉もそれに従いました。

 子どもが複数人いると、誰が親の死にまつわる決定権をもつのかが問題になる。鈴子さんの一家では、知賀子さんの弟が主導権を握っていた。"長男"であり、鈴子さんと同居していたことが大きいのだろう。

生前の鈴子さん

 また鈴子さんには白血病とは言わず「血液の病気」とだけ告げていた。余命わずかであることも知らせなかったそうだ。

 これも、知賀子さんの弟の強い希望だった。

何もできない自分が情けなく、途方にくれる日々

 彼が主導して「在宅看取り」を決断。問題は「訪問医探し」と「看護の割り振り」だった。

 その頃、弟の同級生の身内が、実家近くの場所で訪問医をしていることを知りました。

「白血病患者でも大丈夫ですか」と問い合わせると了承を得られたため、何度か入院していた病院からの引き継ぎをお願いしました。続いて看護の分担は、3人でシフトを組みました。

 仕事が多忙な長男夫婦は週末、自営業の私は週3~4日、パート勤務や子どもの世話がある姉が残りの日を担当。でも私は、母の不安を感じとったことと、また長男の妻の負担を軽減したいという思いから、シフト以外の日もしばしば母のもとを訪れました。

 実は在宅看取りを決断した1月末から母が亡くなるまでのおよそ1か月半、記憶が飛んでしまっているんです。