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 特にNetflixは、日本のアニメスタジオと次々に提携して「聖闘士星矢」や「攻殻機動隊」シリーズの新作を制作、Netflixの「オリジナル」作品として展開を行ってきた。1作品2億円以上かかる制作費のほとんどを独占配信権料としてNetflixが支払うことでアニメ産業にもメリットが大きい取り組みだった。2020年頃まで「アニメ市場が拡大」というニュースが毎年のように流れたのは、主にこれが理由だ。

 しかし、そんなオリジナル作品の人気が出ない。昨年9月に配信開始され視聴数ランキングで上位に入った『サイバーパンク エッジランナーズ』(TRIGGER制作)などの数少ない例外を除いて、「ワンピース」などのテレビ放送作品には視聴数で遠く及ばない。

サイバーパンク:エッジランナーズ

 一方で『機動戦士ガンダム 水星の魔女』(以下『水星の魔女』)や『SPY×FAMILY』のように、テレビ放送された後にサブスク・サービスに「毎週1話ずつ」提供される作品は人気が根強い。待ち時間のストレスなく一気に見られた方がタイパも良く、人気が出そうなものだが、現実は逆になっている。

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 結論から言えば、現在のテレビアニメ消費において、一気見(ビンジウォッチング)する視聴者が増えることは少なくとも新作アニメにとっては効果的ではない。熱心な視聴者は作品を視聴するだけでなく、SNSを通じて感想や二次創作を共有すること自体を楽しみ、時にはそちらがメインになっていることさえある。

 誰かの感想を見て、配信で気になるシーンを見直したりもする。この視聴者同士の連帯感や相互作用は、一気見では実現できない楽しみ方だ。本稿ではそんな視聴・消費スタイルを「繰り返し(リフレイン)消費」と呼んでおきたい。

スレッタとガンダムエアリアルが某人気ゲームシリーズに出演したら…というファンアート。いかにもありそうなセリフのチョイスも秀逸 Twitterより

飛ばし見どころか、見直すことも多い

 そもそもアニメのような物語系コンテンツに「タイパ」はそれほど求められていない。筆者が以前行った 学生へのアンケート調査でもそういう結果が出ている。

 YouTuber番組のような情報系コンテンツならともかく(筆者も無駄に長い動画は早送りする)、情報密度の高い物語系コンテンツは早送りしないとダレる作りになっていない。『水星の魔女』も実に無駄のない構成になっており、もし早送りしながら観た人が居たら、SNSでの盛り上がりをみて慌てて、飛ばしたシーンを見直すハメになるだろう。