完璧すぎる母親のせいで、体調を崩してしまい保健室登校を余儀なくされた男子高校生のレイ君(仮名)。毎日「母親の手作り弁当」を捨てなければいけないほど、彼が追い込まれていた理由とは?
子育ての第一人者・成田奈緒子医師の新刊『高学歴親という病』より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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「母親の手作り弁当」を捨て続ける高校生
研究職のお母さんはある日、炊飯器を捨てました。理由を尋ねると「やっぱりお米は土鍋で炊くに限るから」。
土鍋で炊くので炊飯器はいらないと言うのです。3人の子どもは小、中、高校生。まだまだ手のかかる時期、しかも共働き家庭で、ごはんを毎日土鍋で炊くなんて。家事をいかに合理的に回すかを日々考えていた私は驚かされました。
妻同様研究者のお父さんはさらに多忙で、家事育児にはほぼ参加できません。お母さんは、ワンオペとまでは言いませんが大変なはずです。そのうえ、出来合いの惣菜なども絶対に買わない主義です。すべて彼女の手作りでした。
食事にこだわる以外でも、習い事や塾の送り迎えも絶対に時間に遅れたりしません。学校のプリントは子ども別にそれぞれきちんとファイルに収められ、掃除や洗濯など家事も完璧にこなしていました。
ところが、高校生の長男が学校に行けなくなりました。朝、腹痛がひどくて1時間もトイレにこもってしまう。過敏性腸症候群と診断されました。皮肉なことに母の手作りの料理も「お腹が痛くなるから」とほとんど手をつけなくなりました。
この高校生のような完璧な子育てをされる側、つまり子どもサイドの話を聞いたことがあります。
中高一貫校に通っていたレイ君は、母親が作ったお弁当を捨てていました。毎日、学校のゴミ箱にこっそり捨てます。