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ストックで生きる富裕層

 もちろん暇な(と思われる)高齢者が増えたというのは事実だ。2005年に2576万人だった高齢者人口(65歳以上人口)は2021年の推計値によれば3621万人と40%も増えている。だが高齢者は時間に余裕があったとしても、新幹線に乗って自由に全国を旅行したり、1個600円も800円もするようなスイーツなどを求めて行列を作る高齢者ばかりとは思えない。パチンコだってたくさんやれば支出も増える。

 こうした現象の背景にあるのは、実は戦後3代を経て、日本人の資産格差が明らかに広がっていることにある。非正規雇用で毎日生活するのに必死な人たちがいる一方で、なにもしなくても親の残した不動産や財産で苦労なく、平日真っ昼間でもカフェでまったりできる人たちがいるのだ。そしてその数は年々急増しているのが今の日本社会の姿なのだ。

 野村総合研究所が発表した2021年における全国5413万世帯の純金融資産保有額の分布をみると、保有額が5億円以上の超富裕層は約9万世帯で保有額合計は105兆円。保有額1億円から5億円の富裕層は約139.5万世帯、保有額は259兆円にも達する。つまり全世帯のうちのわずか2.7%の世帯が364兆円、全体額1632兆円の22%相当分の資産を保有していることになるのだ。

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東京のオフィス街

「年収の高い人」ではない

 この値は2005年では1.76%に当たる富裕層以上の世帯が全体額1153兆円の18%相当分を保有していた。わずか15年超の間に1億円以上の純金融資産を持つ世帯及びその保有額はともに約1.7倍に急伸したのである。また超富裕層に限れば、保有額は2.3倍に膨れ上がっているのが実態だ。

 ストックとしてこれだけの資産があれば、必ずしも毎日をあくせく働く必要などないだろう。これらの人たちの多くは株式や生命保険、貴金属だけでなく賃貸用の不動産などを多数保有している。つまり時間と場所の自由を手に入れた人たちなのである。お金持ちというと毎月たくさんの給与所得がある人、つまり年収の高い人、と思いがちだが、日本は所得税率が高く、フローの収入が高くとも、長年にわたって高給取りでもない限り、そんなにストック(金融資産)は形成できないものだ。また給与所得の高い人ほどその収入を確保、継続するために総じて忙しい。暇を持て余すなんてことはないのだ。