予想外ばかりだが、ともあれ引き戸をカラカラ開ける。入るとすぐ左がカウンターで、その向こうは厨房。右側には4人がけのテーブル席が2卓あり、突き当たりの頭上にあるテレビがニュース番組を流している。
広い店ではないし、幼いころに見た漢珍亭のイメージとも違うが、すごくいい雰囲気だ。まさに私が追い求めてやまないB中華そのものである。
B中華の定義
・ 大前提の昭和感
・ ビールと餃子で落ち着ける
・ 店主や常連さんと仲よくなれることが目標
・ もちろんラーメンにも期待
・ ただし雰囲気重視なので、味には妥協してもよい
まずは「ビールと餃子」を注文
まずはカウンターの端に座り、ビールと餃子を注文。厨房で動き続けるご主人に、奥様がそれを伝える。このおふたりが、荻窪のあの人たち? そうなのか?
それにしても意外だった。見つけにくい場所にあるし、そもそも近隣は店舗などない閑静な住宅地。人が集まってきそうなロケーションではなく、このとき時間も14時近くだったのだ。なのに、次から次へとお客さんが入ってくるのである。
常連らしき70代後半くらいの男性が奥のカウンター席に座り、焼売をつまみに紹興酒を2杯飲んですぐ帰っていく。かと思えば近隣でスポーツに興じていたのであろう50~60代くらいの男女数人が、テーブル席で宴会を始める。
めっちゃ地域に溶け込んでいる。
しかも、ほどなく登場した餃子が変わっていた。焼き餃子というより、揚げ餃子に近いのだ。いただいてみれば、外観どおりに皮はカリッとしており、野菜を中心とした具材とのバランスも抜群。ビールとの相性がとてもいい。
真の目的は「ラーメンの味」
だから思わず2本目を注文しそうになってしまったのだが、そうもいくまい。なにしろ私には、ここまで来た目的があったのだ。もちろんラーメンの味、そして荻窪にあった漢珍亭との関係を確認することである。
ところが、出てきたラーメンを目にした瞬間、また戸惑うことになった。記憶の奥のほうに微かに残っている正統派の醤油ラーメンとは違う気がしたからだ。
まず、スープの見た目が濃厚だ。だがその味は、意外とスッキリしている。中太のちぢれ麺との相性もいいのだけれど、麺も昔はこうではなかった。
チャーシューはとても柔らかく味わいがあり、メンマやもやしの味もしっかりしている。つまり、すべてにおいて配慮が行き届いており、適度に現代風でもあり、総体的にみれば非常にクオリティの高いラーメンだといえる。