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約2年かけて自分なりのビブラートを習得

――『星屑物語』を読むと、「口唇口蓋裂」の詳細が綴られていますが、その中で発音が上手くできずに、空気が抜けてしまうといったことに触れています。ほしのさんならではの透き通るような高音は、何か因果関係があるものなのでしょうか?

ほしの この本を出すまで、一切、病気について公言してこなかったので、専門家の方に聞いたことがないんです。もしかしたら空気が抜けるといったことが、僕の歌声に関係あるのかもしれない。でも、子どもの頃から歌が大好きで、アーティストの方の歌い方を見比べて、自分だけの歌唱法を研究してもいたんです。歌手になりたかったくらいでしたから。

©佐藤亘/文藝春秋

 たとえば、僕のケースでいえば発音に関しては良くならないと思っていたので、それ以外のところ……たとえばビブラートを上手に使えるようにするにはどうしたらいいんだろうとか試行錯誤していました。

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 ビブラートといっても、森山直太朗さんのようなビブラートもあれば、19さんのような比較的早いビブラートもある。いろんな癖があって、自分なりのビブラートを習得するまで、2年ぐらいかかりましたね。

「障害や病気を抱えていても…」

――2年!? それだけ歌に対しても本気だったと。そうすると一つ疑問が浮かぶのですが、歌ネタをやろうとは思わなかったのですか?

ほしの 実は、「カーディガン」時代の初期にやっていたんですよね。初めて歌を評価してくれたのも元相方で、「ほしの君って歌うまいね」って。それで歌ネタをいくつか作ってみたんですけど……結局、笑いは生まれなかった。

©佐藤亘/文藝春秋

――でも、その元相方が YouTubeに誘い、ファーストテイク動画に導いた。ドラマがありますよ。誰かがきちんと見ているんだなと思わされます。

ほしの すごくうれしいです。星野一成名義で曲まで出していただけるなんて、夢にも思っていなかったですから。ミュージシャンになりたいという夢まで叶って、今では自叙伝まで出させていただいて。ただ、病気のことを書いたことで、いろいろなリアクションがくると思うんです。

 今、一番心配なのは、自分がコントをしたときなどに笑ってもらえるのかなという不安。僕はお笑いに人生を救ってもらったから、一生芸人でい続けたい。病気があったとしても自分次第でどうにでもなる――そういったことが『星屑物語』を通じて、うまく伝わってくれたらと思っています。

 何か障害や病気を抱えていても、自分のやりたいことや将来の夢があるならあきらめる前に、少しチャレンジしてみてもいいかなって感じてくれたらうれしいです。背中を押すことはできないですけど、背中をさするぐらいの感じといいますか(笑)。