窓口は、機械と目視の二重手間に
たぶん、こうしたケースが増えると、政府は「暗証番号」もなく「顔認証」も信用できないので、窓口での目視を必須とするようなルールなどを作るのでしょう。
そうなれば、「簡便」が売りのマイナ保険証ですが、従来の保険証にない二重手間をかけなくてはならなくなり、従来の保険証の方がスピーディーな事務手続きができるという本末転倒な事になります。
疑問なのは、政府が法律まで変えてマイナ保険証を義務化した目的は、「個人ID」として使わせるだけでなく、医療情報の利活用(DX・デジタルトランスフォーメーション)なのに、「個人ID」としても使えず、医療情報も他人のものとまざる可能性があるというなら、そもそもカードを持たせる意味がないということです。
「目視」と「顔認証」で医療機関に二重の負担がかかるだけでなく、政府も新たな制度を導入するために税金を使うことになります。
マイナ保険証の悪用やなりすましの可能性が考えられ、医療機関にとっては二重手間になり、なおかつ税金も使うとなれば、今の保険証と比べるとマイナスばかり。
これでは、ますます現場を混乱させ、どんどん「便利」や「安全」という本来の目的から遠ざかっていくことになりそうです。
INFORMATION
荻原博子さんの新刊『マイナ保険証の罠』(文春新書)が8月18日に発売されます。
7000件以上の誤登録、医療現場でのシステム障害など、トラブル続きの「マイナ保険証」。さらに2024年秋には、現行の健康保険証は使えなくなる――。政府を挙げて暴走するDX政策の罠を、利用者の目線でわかりやすく解き明かす。