そんなわけで、西宮北口駅は、阪神電車やJR線の西宮駅を脇に従えてもいいほどの、押しも押されもせぬ大ターミナルといっていい。そうなれば、この駅の周りには何があるのか、気になってくるではないか。いったい西宮北口駅、どんな駅なのか。
そもそも「北口」って何なんだ…?と思いつつ駅に向かうと…
そもそも、である。西宮北口駅が便利なターミナルだというのはわかるのだが、この駅名は初見殺しにほかならない。筆者も実は何度もこの駅で阪急神戸線と今津線を乗り継いだことがある。JRA阪神競馬場が今津線沿線の仁川駅にあるからだ。
ただ、乗り換え検索アプリなどで調べると、「西宮北口で乗り換えなさい」と言われてちょっと戸惑うのだ。北口?ってことはいったん駅を出てバスか何かに乗るのか?と……。なんで駅が“北口”などと名乗っているのか。そんなことをされたら、初めて訪れる人はわけがわからなくなってしまうではないか。
と、当たる先のない不満を抱きつつ、西宮北口駅にやってきた。繰り返しになるが、この駅には東西に阪急神戸線、南北に阪急今津線が通っている。今津線は実質この駅で南北それぞれが分断されているが、地図で見れば十字に線路が交差している、ということになる。
ちなみに、鉄道ファン向けにいうならば、かつては神戸線と今津線が地上でそのまま交差する「ダイヤモンドクロス」を見られる駅として知られていた。鉄道の線路同士が垂直に平面交差する例はほとんどなく、レアスポットとして密かな人気があった。ただ、それは1984年、40年ほどまえに廃止されている。だいぶ昔のお話だし、西宮北口駅に何があるのかという本質からは逸れるので、横に置いておくことにする。
線路で区切られた4つの町。まずは駅の南東に向かうと…
ともかく、十字に線路が通っている西宮北口駅は、すなわち駅周辺の町が線路によって4つに区分されている、ということだ。なので、それぞれの町を歩いて行くことになる。まずは副駅名にもなっている西宮ガーデンズ。ガーデンズがあるのは、駅の南東側である。
西宮ガーデンズまでは、駅直結の西宮ガーデンズゲート館を間に挟んで繋がっている。人の流れの多くはガーデンズ。地上に降りることなく、ゲート館を抜けてものの5分でガーデンズの中に入ることができる。店舗数は250以上を数え、映画館も入っている関西全体でも最大規模の商業施設だ。
オープンしたのは2008年で、かつて阪急ブレーブスの本拠地だった西宮球場の跡地に建設された。西宮ガーデンズがオープンしたことで、西宮北口駅のお客の数は急増したという。町にとってはいわば新参ともいえるガーデンズこそ、西宮北口駅にとって最大のシンボルといっていい。