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先輩芸人のDr.ハインリッヒから学んだこと

――おふたりは元々大阪吉本でやられてたんですものね。

出井 そうですね。それこそ全然劇場にも馴染めず、ほんとDr.ハインリッヒ(先輩の女性芸人)さんだけが心の支えで。

©深野未季/文藝春秋

楢原 朝の10時からのオーディションバトル一緒に行ってね……。

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出井 2組とも落とされて。

楢原 作家に変なこと言われて。

出井 4人で喫茶店に行って。

楢原 そこでお互い嫌な思いを吐き出して。それでまた次の週はバトル行ってみたいな(笑)。

出井 未だに覚えてますね。ハインリッヒさんに若い作家さんが「もうちょっとね、女性らしい漫才したら?」とか「もうちょっと双子を活かしたら?」とか。

――Dr.ハインリッヒさんは双子の女性漫才師だから……。

出井 彩さんが「そんなことないと思います!!」って言って、ガーッて帰って。僕らに「コーヒー行くで!」って(笑)。

楢原 「飲み行くで」じゃなくて。二人ともお酒飲まないから。

出井 そういうのの繰り返しだったので。覚えてるなあ。

――以前Dr.ハインリッヒさんにインタビューをさせてもらったとき、ヤーレンズさんのお名前はたびたび出ていました。”数少ない理解者”として。

出井 めちゃくちゃリスペクトしてますね、ハインリッヒさんのことを。自分の芯、譲りたくないものがあるんだったら譲らなくていいんだっていうのはお二人から学んだことです。それがいつか実を結ぶということも、お二人の姿勢から学びました。なんか、僕常にハインリッヒさんが心の中にいるんですよ。

©深野未季/文藝春秋

芸人界は男社会。いつも心にハインリッヒさんが…

――どういうことですか。

出井 芸人界はどうしても男社会なので。僕らもその中にいるので、ふとした時にそれが悪く作用したら嫌なんですよ。特に女性芸人の後輩なんかと絡む時なんかは「これハインリッヒさんに見られてるとしたらどうだろう」と思うようにしてます。まだまだ全然駄目なんですけど、そのハインリッヒさん視点は助かってます。

――心のリトルハインリッヒさんが。

出井 リトルハイン姉さん。

楢原 そうですね。僕の場合は……ちょっと語彙力がないのであれなんですけど、尊敬というよりは、こういう人たちには僕は勝てないんだろうなってずっと思いながら芸人やってる。最適解っていうんですか、姉さんたちは自分が面白いと思ってることを、お客さんにやる。自分が面白いと思ってることを表現してウケてる芸人が一番強いんですよ。僕はそれがないので。別にウケたらなんでもいい。僕だったらその作家の目線じゃないですけど、女性で双子で漫才するなら、それめちゃめちゃ使うと思うんですよ。

出井 まあウケやすい。

楢原 それの一番ウケるかたちの漫才を作ると思う。でも姉さん方はそこを面白いと別に思ってなくて。それよりも自分たちが思ってることの方がおもろいやろっていうのをやってウケてる人なので。本当にかっこいいなっていうか、そうなりたいなって。これがお笑い芸人というか、これが漫才師なんだろうなって。