財部 多くの方は「早くから子供に勉強させれば、どんなに才能が無くても偏差値60か50くらいの大学なら入れる」と考えているかもしれません。しかし、実際に子供たちを見ていると違うんです。どんなに努力しても偏差値50にすら届かない子供もいるのが事実だと思います。
そういう子は、中学受験には絶対に向いていないし、公立中学に進んだ方がいいと私は考えています。しかし現実には、偏差値が真ん中より下の子供たちが中学受験の競争に巻き込まれている。親御さんたちには、その問題に気づいてもらいたいのです。
中学受験は「勉強に向いている子」に特化した制度
――昨今の中学受験ブームには、どんな問題があると思いますか?
財部 本来、中学受験は「生まれつき勉強に向いている子」に特化した制度だと思います。それなのに、最近は地域によっては3~4割の子供たちが中学受験をします。人間の脳の多様性や偏差値の正規分布(平均値の人数が最も多くなること)から考えても、それだけ多くの子供たちが中学受験に向いているはずがありません。
また、中学受験の算数の試験問題などは、国立大学医学部の学生でも解けないくらい難しいのも問題点の1つだと思います。私自身、中学受験の指導に取り組み始めたとき、あまりの難しさに驚愕しました。
――確かに難しいですね、大昔に解こうとしたら全く歯が立たなかった記憶があります。
財部 解くためには、中学以降は全く使わない特殊な計算方法を覚えなければなりません。それを教えるために小学校の最後の数年を費やすのが、子供の成長のためになるのか疑問に感じます。
「中高一貫校に入れたら良い大学に行ける」と世の認識がありますが、実際には難しい試験を課して勉強が得意な子を選別しているから、進学実績がよくなっているだけではないでしょうか。
――中学受験に向いているのは、どんな子供だと思いますか?