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「出会ったその日に幹部と男女関係に…」売れないキャバ嬢だった“ルフィ強盗団の愛人”(27)が、特殊詐欺グループに入った経緯

『「ルフィ」の子どもたち』より #3

genre : ライフ, 社会

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鳴かず飛ばずのキャバ嬢だった柴田の過去

 この“取引”はルフィグループが、フィリピン・マニラ近郊にある廃ホテルを所有者から分割で買い取る契約を結び、1回目の代金が支払われた場面だ。グループはこれで、フィリピンに拠点となる物件を手に入れたのだ。買収の原資となったのは当然特殊詐欺でだまし取ったカネ。それを全国から集め、ホテルまで運んできたのが柴田だった。

 さかのぼること3か月、柴田は都内の繁華街でキャバクラ嬢として働いていた。高校を卒業してから多くの時間を夜の街で過ごしてきた柴田。手に職をつけようと奮起したこともあったが、自分には何かをやり遂げられるとは思えず、いつも早々に挫折していた。物事をやり遂げた経験などなかったのだ。

 結局、糊口をしのぐ場所は夜の街。そこに行けば生きられた。

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 愛嬌のある柴田は働く店では決して不人気ではなかったが、ナンバーワンなど日の当たる場所にいたわけではない。

 20代後半の女がキャバクラで得たのは生活に困らない程度の稼ぎ。鳴かず飛ばずのキャバ嬢――そんな立ち位置だった。

柴田千晶被告(写真=『「ルフィ」の子どもたち』より)

フィリピンでの出稼ぎを決意

 しかし、柴田にも思うところがあった。こんな生活をいつまで続けられるのだろうかと。店でも年齢は上から数えたほうが早くなっていた。自分より稼ぐのは年下ばかり。

 実際、ここ数年、稼ぎが減ることはあっても、増えることは一度もなかった。

 何かに挑戦するほどのカネもなければ、度胸もない。未来には蓋をして、ただ淡々と日々をやり過ごしていた。鬱屈とした思いが溢れるようになった頃、キャバクラの元同僚から声をかけられた。

「フィリピンにいる知り合いの実業家が、現地で働ける人を探しているみたい」

 なぜ自分に声がかかったのか疑問に思った。フィリピンの公用語であるタガログ語はもちろん、英語も満足に話せやしない。向こうでの水商売なのだろうか。少なくとも、真っ当な仕事ではないだろう。ただ、今の生活を続けるよりはマシだ。パッとしない人生がひょっとしたら劇的に好転するのかも、そんな錯覚を抱かせる唐突な誘いだった。