フジテレビからアマゾンをつくる
後年、その真意を筆者がさらに問うと、こんな答えが返ってきた。
「ひと言で言えば、メディアのリーチが欲しかっただけ。ただ、その狙いはサブスクリプションなんですよ。今では説明しやすいんだけど、例えて言えば、フジテレビからアマゾンをつくるイメージです」
「アマゾンって本質的に言えばサブスクリプション。彼らはインターネットの黎明期に『買ってもらいやすいものは?』と考えて本から始めた。それでユーザーの決済アカウントを作って、他が付いてこれないくらい投資して(サービスを作って)いく。それをメディアという強力な装置を使ってやろうと思っていたんですよ」
ポータルサイトの最大の収入源は広告である。ただ、広告収入に依存した収益モデルからの脱却は、堀江がライバル視したヤフーも早くから手を付けていた。例えば、ヤフー・ショッピングやヤフー・オークションがそうだ。これらのサービスを使ってもらうためにはユーザーにIDを作ってもらい、クレジットカードのような決済と紐付けることになる。一度、このようなIDをユーザーに作ってもらえれば、有料課金型サービスに横展開していく、つまりユーザーを誘導していくことが簡単になるのだ。
堀江が例に挙げたアマゾンも本のネット通販から始めた。当初は一度きりの利用客が多いが何度も使ううちにユーザーは毎回クレジットカード番号や配送先を打ち込むのが面倒になり、IDを作る。そこからアマゾンは、動画配信などの本格的なサブスクリプションへと移行していったのだ。
ポータルサイトに集まったユーザーを徐々に課金型のサービスへと誘導していく構想の突破口として、堀江はフジテレビが持つ絶大な影響力を使おうと考えたというのだ。
当時は「ネットと放送の融合」という言葉がさかんに使われていたが、堀江の本当の狙いはフジテレビのコンテンツをライブドアのポータルサイトで二次利用したり、ライブ配信したりするだけではなかったということだ。
「テレビといえばみんな(狙いは)動画ビジネスと言うけど、ネットで動画を見るなんて、当時の3G(第3世代のケータイ)ではダメですよ」
真の狙いは、ポータルサイトの先にある課金型サービスへと素早く移行するためにフジテレビが持つ「リーチ」を最大限に活用することにあったのだという。