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「反省していないのではないかと疑ってしまいます」

  事件の記憶に飲み込まれないように思考を前向きにするトレーニングなどをしているが、今でも日常的に「怖がる」ものがあるという。

「中学生の姿を見ると、恐怖を感じるようです。『中学生』という存在が加害者のAを思い出させるようで、男子だけでなく女子でも避ける素振りをします。通学路などで中学生と遭遇すると走って距離を取ったり、一気に追い抜かして視界に入らないようにしています」

  サトルくんは事件の記憶とどう向き合っているのか。母親を通じて、こう話してくれた。

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「性被害のことを口に出すことはしたくないです。みんなが悲しく辛そうにするから、しない方がいいと思って、全部自分が抱えこんでいます。でも、普段の生活では楽しい事や頑張りたい事に気持ちを向けて過ごしています。精神科の先生にも辛いことは言いにくいけど、眠れないって悩みだけは言えたから、困ったことを伝えたら助けてもらえるんだってわかってきました」

  加害男子のAやその保護者は、今でも同じ市内に住んでいる。彼らについてどう思っているのだろうか。

サトルくんが被害を受けた公園

「加害者やその親に対する感情までサトルが抱え込むのは可哀そうすぎるので、そこの問題を考えるのが親の役割だと思っています。今は保護観察官と保護司を交えてやりとりをしていて、カウンセリング費用の弁済などの交渉をしています。

  ただ気になるのは、少年審判の中でAくんが『性に関する学習をする』という項目があったのですが、専門機関に行ったのは3年間で1度だけ。『正常』と診断を受けたと加害者が言っていることです。正直に言えば、反省していないのではないかと疑ってしまいます。やりとりをする中で感じるのは、Aくん本人以上に、お母さんがまだ十分に飲み込めていないように見えています」