「どうしても外せない一人」としてモー娘。に

 そんな辻だが、本来は引っ込み思案だったという。小学6年生のときにモーニング娘。のオーディションを受けたのも友達に誘われてだった。歌うことは幼い頃から好きだったとはいえ、とくに習っていたわけではなく、まさか受かるとは思っていなかった。それが、審査を次々と通過し、気づけば最終の合宿審査まで進んでいた。

モーニング娘。時代の辻希美(2001年撮影) ©時事通信社

 このときの合格者は3名の予定で、発表の際、プロデューサーのつんく(現・つんく♂)から石川梨華、吉澤ひとみ、加護亜依の名前が呼ばれたところで、辻は落ちたと思った。だが、つんくは続けて「どうしても外せない人がいるので、もう一人プラスします」と言うと自分の名前を呼んだので、頭が真っ白になったという。

 なお、つんくの後年の証言によれば、このとき事務所の社長からは新メンバーは2名で頼むと言われていたが、その前のオーディションで選んだ後藤真希のインパクトがあまりに大きかったため、それに対して《4期が1~2人っていうのは比較され過ぎて大変だろうなって感じて、責任や注目を薄めるという意味で4人選んだように記憶しています》という(『モーニング娘。20周年記念オフィシャルブック』ワニブックス、2018年)。

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2000年、市井紗耶香卒業発表時のモーニング娘。(前列左から)矢口真里、中澤裕子、市井紗耶香、後藤真希、保田圭、(後列左から)飯田圭織、吉澤ひとみ、辻希美、加護亜依、石川梨華、安倍なつみ

相方・加護亜依との出会い

 結果的につんくが4人を選んだことで、辻と加護のコンビが生まれ、グループはさらに活気づくことになる。二人は同学年で背格好も同じで、おまけに苗字もツジとカゴと2文字どうしと、そのシンクロにお互い驚いたらしい。ただ、性格はまるで違った。東京出身の辻に対し加護は関西出身で、見た目は派手だし、誰とでも仲良く話せる。根はおとなしい辻にとって加護はいままで見たことのないタイプで、一緒にいるとワクワクしたという。

加護亜依 ©️時事通信社

 加入当時、グループ最年少だった二人は常識を知らないぶん最強であった。加入した初日に先輩メンバーの安倍なつみに「なっち」と友達感覚で話しかけたのは序の口で、台本を無視するのは当たり前。歌番組のトークの本番中、大人数で一列に並ぶとMCの話が聞こえないのをいいことに、二人で本題と全然違う話で盛り上がっては怒られた。舞台裏でも、マネージャーのノートパソコンに二人でダイブして壊したり、ホテルの廊下で事務所の社長をでんぐり返しで追いかけたりとやりたい放題であった。